「……ごめん、近づかれると……今は…」
叶兎くんは悲しそうに眉をひそめて拒絶するように一歩下がり、私から更に距離を取った。
そんな苦しげな様子を見て、少しでも心の重荷を軽くしてあげたくて、わざと悪戯っぽく冗談めかして笑ってみせる。
「……ふふ、そんなに私の血が美味しかった?」
「……………笑い事じゃないんだけど」
けど、叶兎くんは気まずそうに目を逸らしたままボソッと呟いた。
「……あのとき、理性が全部溶けたみたいに、……何も、考えられなくなった…」
そこで、叶兎くんは言葉を濁して切った。
「……何で、そんなに平気そうなの。怖くないわけ、ないのに 」
…まぁ、実際…怖かった。
割と本気で命の危機を感じたし痛かったし。
でも。
「……だって、叶兎くんだもん。 」
真っ直ぐに叶兎くんを見つめて、微笑む。
理由なんて、それだけで十分だった。
「それに、こういうことだって初めてじゃないしね?」
2回目ともなれば、あの時よりは冷静でいられたと思う。


