総長は、甘くて危険な吸血鬼 Ⅱ




「はい乗って。君が選ばないなら手が空くからおんぶね。」



琥珀が私の前に背中を向けて、トンとスマートにしゃがみ込んだ。

正直、今の私のボロボロの足取りでは、みんなの足を引っ張って足手まといになるだけだ。

…悔しいけど、琥珀の手を借りるしかなかった。



「……ごめん、ありがとう」



私は消え入るような声で言って、渋々その背中に乗せてもらった。

私の身体を支えると、琥珀はふっと優しく小さく笑う。



「前みたいに途中で下ろす訳には行かないから暴れないでね」



ぐいっ、と安定した力で背負い上げられた。

ハンターとして鍛えられた琥珀の体は、人一人背負って走ることなんて造作もないこと。



一斉に動き出し、東の階段へ向かう足音だけが、虚ろな廊下に響く。

男の言葉通り本当に誰一人として追手の気配は現れなかった。



階段を駆け上がる琥珀の背中は、揺れが少なくてとても安心する。


でもその安定感が逆に、自分の体の限界を自覚させた。

気を抜くと、すぐに視界がぐらりと傾いてしまう。



「っと、大丈夫?しっかり掴まってて。」



もう、返事をする余裕すら残っていなかった。


意識が急速に遠のき、まぶたが鉛のように重くなる。