「はい乗って。君が選ばないなら手が空くからおんぶね。」
琥珀が私の前に背中を向けて、トンとスマートにしゃがみ込んだ。
正直、今の私のボロボロの足取りでは、みんなの足を引っ張って足手まといになるだけだ。
…悔しいけど、琥珀の手を借りるしかなかった。
「……ごめん、ありがとう」
私は消え入るような声で言って、渋々その背中に乗せてもらった。
私の身体を支えると、琥珀はふっと優しく小さく笑う。
「前みたいに途中で下ろす訳には行かないから暴れないでね」
ぐいっ、と安定した力で背負い上げられた。
ハンターとして鍛えられた琥珀の体は、人一人背負って走ることなんて造作もないこと。
一斉に動き出し、東の階段へ向かう足音だけが、虚ろな廊下に響く。
男の言葉通り本当に誰一人として追手の気配は現れなかった。
階段を駆け上がる琥珀の背中は、揺れが少なくてとても安心する。
でもその安定感が逆に、自分の体の限界を自覚させた。
気を抜くと、すぐに視界がぐらりと傾いてしまう。
「っと、大丈夫?しっかり掴まってて。」
もう、返事をする余裕すら残っていなかった。
意識が急速に遠のき、まぶたが鉛のように重くなる。


