『研究は俺の生きがいなんだ。単純に趣味だよ。……まぁ、それだけじゃないけどね。』
「それだけじゃないって……」
『君にとっての赤羽くんみたいな存在、って言えば分かるかな?……俺にも、いたんだよ。どうしても手に入れたい、狂おしい存在がね』
その一言で空気が凍った。
スピーカー越しに語る男の声は相変わらず飄々としていたけど、「かつていた」という過去形の言葉が、妙に胸に引っかかって消えなかった。
「……過去形だな。」
時雨くんが鋭く突っ込む。
『まぁね。』
男はそれ以上、何も語らなかった。
不気味な沈黙だけを残して、スピーカーのノイズがぷつりと途切れる。
「……一方的に切りやがった、あの野郎……!」
九条くんが忌々しげに舌打ちをする。
琥珀は銃をホルスターに戻すと、厳しい表情でみんなを見渡した。
「今は考えても仕方ない。とにかくここを出よう。赤羽くん運べる?」
「俺が背負う。貸せ。」
九条くんが、ぐったりとした叶兎くんを軽々と担ぎ上げる。
意識のない彼の体が、力なく揺れた。
「行こう。奴の気が変わらないうちに。」
蓮水さんが先頭に立ち、周囲を確認しながら走り出す。


