『あ、そうだ。』
不意に空気が変わった。
それまでの軽薄な声の中に、ぞっとするような冷たい刃のような響きが混じる。
『投与した血の効果、3日もあれば消えると思うけど連れて帰ってその間どうなるかは知らないからね。』
深い沈黙が降りた。
「どうなるか知らない」
その不吉な予言だけが、耳の奥で反響する。
「……おい、それどういう意味だ」
九条くんが今にも殴りかかりそうな険しい声で問い詰めると、男は当然のことのように、平然と答えた。
『言葉通りだよ。何が起きてもおかしくないでしょ。体内に残留してる間は理性のブレーキが緩くなるし、さっきみたいなことがまた起きるかもね。』
叶兎くんにこんなことしておいて…なんでそんなに他人事なの…?
「……っ、あなたは、何者なの?なんでこんなことするの!」
私の怒りの叫びに、スピーカーの向こうで少しだけの間があった。
ギィ……と、男が向こうで椅子を軋ませる音が聞こえる。
『んー……何者か、か。』


