琥珀がギリ、と奥歯を鳴らし、部屋に設置されていた防犯カメラを睨みつける。
「…全部見てたんだ?」
『見てたよ? だって警備置いても君たち突破するでしょ。無駄な人員割くよりデータ取った方が合理的じゃない?』
男のスピーカー越しの笑みが見えるようだった。
……研究のためにわざと通した、ってこと…?
叶兎くんをあんなに苦しめて、私をこんな目に合わせておいて、…ただの「データ」だなんて。
『まぁでも、No.0と純混血に死なれても困るしね。あ、出口なら空いてるから勝手にどうぞ。追いかけっこは趣味じゃないんだ。』
私は琥珀の肩を借りながら、ふらふらと立ち上がった。
怒りで全身が震える。
「最初から…、全部っ…!」
『いやぁ、ごめんね。まさか君がそこまで激しく吸血されるなんて思わなかった。赤羽くん、相当君のことが好きなんだね』
クスクスと、自分のいたずらが大成功した子供のように楽しげな笑い声がスピーカーから響く。
琥珀がとうとう堪えきれずに、凄まじい殺気を放ちながらスピーカーに向けて迷わず銃口を跳ね上げた。
撃っても意味がないことは分かっている。それでも、この怒りをぶつけずにはいられない。
「……下手したら死人が出るところだったんだけど、「ごめんね」で済むと思ってんの?」
スピーカーの向こうから、小さくあくびを噛み殺すような気配が伝わってくる。
『死んでないでしょ?結果オーライだよ。』
声のトーンは一切変わらない。本気でそう思っているんだ。
研究者としての倫理観の欠落が、言葉の端々からにじみ出ていた。


