総長は、甘くて危険な吸血鬼 Ⅱ





「ところで、胡桃。おんぶと姫抱っこどっちがいい?」



そんな凍りついた空気を強引に切り裂くように、琥珀が唐突に突拍子もない質問を投げてきた。



「え?」



あまりに場違いな問いに、私は目を丸くする。



「歩けないでしょ、その足取りじゃ。」



あっ…そういうこと…?

確かに、今の私は目眩が酷くて、自分の力で立っているのが精一杯だけど……。



その時──。


──ザザッ……ー。

部屋の天井に設置されたスピーカーから鼓膜を震わせる耳障りなノイズが走り、全員の足がピキリと凍りついた。



『やぁ、お疲れ様。楽しいショーだったよ。』



頭上のスピーカーから響いてきたのは、のんびりとした、この緊迫した場にそぐわないほど穏やかな男の声だった。

その特徴的な不快な声に、私はハッとして恐怖に目を見開き、顔を上げる。




────間違いない。あの男の声だ。

…叶兎くんを病院の地下で攫った、あの時の。



『暴走と吸血衝動に対して、無効化能力で対抗しつつ言語的接触で鎮静化させる。……いやー素晴らしいね。論文三本は書ける。』