「っ!」
身構える琥珀。
けど、そこにいたのは敵ではなく、聞き慣れた2人の声が聞こえる。
九条くんと蓮水さんが、険しい表情で部屋に駆け込んできた。
二人は部屋に入った瞬間、ぐったりと横たわる叶兎くんと血まみれになった私の姿を見て、凍りついたように足を止める。
「は?!何だよこれ……!?」
九条くんが信じられないものを見たというように絶句する
蓮水さんも驚きつつも、鋭い視線ですぐに周囲の安全を確認した。
「っ状況は。」
「詳細は後。今撤収が先。退路は?」
琥珀が短く促すと、九条くんは廊下を顎で示した。
「地上へのルートは確保してある。東側の階段から抜けられる。……ただ」
九条くんの端正な表情が、不気味なほどに曇った。
「………誰もいなかったぞ、このフロア」
「それ、俺たちも話してたとこ。」
その言葉に、部屋の中に冷たい沈黙が落ちる。
この場にいる全員が、言葉にできない同じ胸騒ぎを覚えていた。
不自然な静けさの意味──何かが起きている。
自分たちの知らない場所で、誰かの手のひらの上で踊らされているような……気味の悪い感覚。
叶兎くんが目の前で攫われたあの日と同じ、得体の知れない強い悪寒が私の細い背中を襲う。


