総長は、甘くて危険な吸血鬼 Ⅱ





「っ!」



身構える琥珀。

けど、そこにいたのは敵ではなく、聞き慣れた2人の声が聞こえる。


九条くんと蓮水さんが、険しい表情で部屋に駆け込んできた。


二人は部屋に入った瞬間、ぐったりと横たわる叶兎くんと血まみれになった私の姿を見て、凍りついたように足を止める。



「は?!何だよこれ……!?」



九条くんが信じられないものを見たというように絶句する

蓮水さんも驚きつつも、鋭い視線ですぐに周囲の安全を確認した。



「っ状況は。」

「詳細は後。今撤収が先。退路は?」



琥珀が短く促すと、九条くんは廊下を顎で示した。



「地上へのルートは確保してある。東側の階段から抜けられる。……ただ」



九条くんの端正な表情が、不気味なほどに曇った。



「………誰もいなかったぞ、このフロア」

「それ、俺たちも話してたとこ。」



その言葉に、部屋の中に冷たい沈黙が落ちる。

この場にいる全員が、言葉にできない同じ胸騒ぎを覚えていた。


不自然な静けさの意味──何かが起きている。


自分たちの知らない場所で、誰かの手のひらの上で踊らされているような……気味の悪い感覚。


叶兎くんが目の前で攫われたあの日と同じ、得体の知れない強い悪寒が私の細い背中を襲う。