「……くる、み……?」
その声は、私の名前を呼ぶいつもの、甘くて優しい叶兎くんの声だった。
私の名前を、ちゃんと呼んでいる。
「……うん。ここにいるよ」
叶兎くんの額に、愛おしさを込めてそっと軽いキスを落とした。
すると、私の白衣を破れんばかりに強く掴んでいた叶兎くんの手から、ふっと完全に力が抜ける。
指先を小さく震わせたまま、その手は力なくコンクリートの床へと滑り落ちていった。
「あたま、……割れそ……」
まだ瞳の金の侵食は消えていない。完全に元に戻ったわけじゃない。
それでも、今私の前にいるのは紛れもなく、叶兎くんだ。
同時に背後で、待ちわびていたロック解除の電子音が鳴り響いた。
「…やっと開いた……!」
隔壁のロックが解除されると同時に、琥珀が滑り込むようにして部屋へと駆け込んできた。
床に転がっていた私の護身用の拳銃と、自分が投げ入れた実弾入りの重厚な銃を素早く拾い上げる。
そのまま銃口を油断なく構えたまま、床に倒れ合うようにして密着している私たちを、鋭い視線で見下ろした。
「……胡桃、血だらけじゃん…!?」
私と目が合った瞬間、琥珀の顔が驚愕と険しさで歪んだ。
その銃口が、迷うことなく再び叶兎くんに向けられる。


