総長は、甘くて危険な吸血鬼 Ⅱ




私は震える手で、もう一度叶兎くんの熱い頬を包み込んだ。



「……こんなの、叶兎くんじゃない。お願い……私の目を見て。私だよ、胡桃だよ」



語りかける声が、自分でも驚くほど優しく響く。



「……叶兎くん。みんなの所へ、一緒に帰ろう?」



そう言って、私はそっと自分の額を彼の額にくっつけた。

まつ毛が触れ合うほどの距離で、今度は優しく、慈しむようにそっと唇を重ねる。


さっきの、血の味がする濃厚で激しいキスとは違う。

ただ、世界で一番大切で、愛している人に向けるための、柔らかくて温かな、祈りのような口づけ。



「……っ」



その瞬間、金色の侵食に支配されていた叶兎くんの瞳の端から、一滴の涙が溢れた。

それは頬を伝って、私の頬へと落ちる。



叶兎くん自身も、自分がなぜ泣いているのか分かっていないのかもしれない。


叶兎くんの身体から少しずつ強張った硬い力が抜け、あれほど激しかった暴走の震えが嘘のようにゆっくりと収まっていく。