「──っ!……」
ゾク、と身体が震える。
理性のない瞳が、至近距離で私だけを映し出していた。
欲しい。もっと近くに。
そんな本能だけが剥き出しになったみたいに。
耳元で、低く、掠れた声が響いた。
「ぜんぶ、俺の──」
それだけを呪文のように呟いて、叶兎くんの歯が私の耳の縁をかすめ、甘噛みの刺激にゾクッとするような電流が背筋を駆け抜ける。
そのまま重心を崩され、私たちは冷たい床へと横に倒れ込んだ。
体勢は再び入れ替わり、私はまたしても彼に完全に組み敷かれてしまっていた。
「…叶兎くんっ…お願いだから……正気に戻って…!」
必死の叫びが、狭い隔離室にむなしく響く。
今の叶兎くんは、私の知っている叶兎くんじゃない。
得体の知れない「異物の血」に飲み込まれて、ただ本能のままに私を求めている。
お願い……これ以上、壊れないで……。
叶兎くんの整った美しい顔が、吐息が触れ合うほどの至近距離まで再び迫る。
熱い吐息が私の唇に直接かかり、互いの唇が再び深く重なり合おうとした、その刹那の瞬間。
私は、弾かれたように顔を思い切り横へと逸らした。


