「足りない……もっと……」
叶兎くんは私の首元に開いた傷口を、熱を持った親指でじっとりとなぞった。
滴る血が彼の指を汚していく。
その瞳はもう、完全に理性を失っていた。
「んっ……っ、叶兎…くん……!!」
必死に声を振り絞る。
幸いなことに、首の太い動脈はわずかに外れているようだったけど、止まることのない吸血の勢いに私の体からは急速に血の気が引いていた。
このままだと、遠からず私は貧血で意識を失ってしまう。
そうなれば、暴走する叶兎くんを止める術は本当になくなってしまう。
「……っ、ね、お願いだから落ち着いて……っ」
必死の叫びをぶつけても、今の叶兎くんにはその言葉の意味が届かなかった。
…いや、仮に脳に届いていたとしても、狂わされた本能を自分の力ではもう止められないのだろう。
激しい拒絶反応を起こしているのか、叶兎くんの身体がピクリと跳ね、再びその凶暴な牙が私の傷ついた首筋へと迫る。
今度はさっきよりも強く、容赦なく、深く──。
「っ──!」
ドクンドクンと、血が体から吸い出されていく感覚。
指先からみるみるうちに体温が奪われて、私の意識は急速に、目の前を覆い尽くす真っ白な霧の中に溶け込んでいこうとしていた。


