総長は、甘くて危険な吸血鬼 Ⅱ




「っ、う……、あ……」


首筋からドクドクと溢れ出る熱い液体が、叶兎くんの口元を伝って床へと容赦なく滴り落ちていく。

それが自分の血なのだと思うと、目の前がちかちかと明滅した。



仰向けに押し倒された私の体には、叶兎くんの身体が完全にのしかかっていた。

まるで馬乗りのような体勢で押さえつけられ、身動きを完全に封じられてしまう。



……あ、れ……?



叶兎くんはいつだって、吸血の加減を誰よりも知っている。



優しく丁寧に血を吸うし、こんなふうに全体重をかけて私を押し潰したりしない。



けれど、今の叶兎くんは。

牙をさらに深く、えぐるように食い込ませ、獣のように貪りながら私の血を啜っている。



喉の奥からは、ゴクゴクと喉を鳴らす音と、低い唸り声が漏れていた。



いつかの夜、契約する前にも、吸血衝動に負けそうになった叶兎くんに襲われたことがあった。

けど、契約を結んでからはそんな衝動に支配されることは、もう二度となかったはずなのに。



っ……違う。

これは、叶兎くんのせいじゃない……!



多分、あの恐ろしい実験で無理やり体内に流し込まれた、無数の「異物の血」が、叶兎くんの純粋な吸血本能を内側から狂わせてしまっているのだ。

私との契約による絶対的な制御の絆を、上から強引に、力技で凌駕してしまっている。


叶兎くんが、ふは、と浅い息を吐きながらゆっくりと顔を上げた。

血に濡れた彼の唇が、妖艶に歪んでいる。