「っ、う……、あ……」
首筋からドクドクと溢れ出る熱い液体が、叶兎くんの口元を伝って床へと容赦なく滴り落ちていく。
それが自分の血なのだと思うと、目の前がちかちかと明滅した。
仰向けに押し倒された私の体には、叶兎くんの身体が完全にのしかかっていた。
まるで馬乗りのような体勢で押さえつけられ、身動きを完全に封じられてしまう。
……あ、れ……?
叶兎くんはいつだって、吸血の加減を誰よりも知っている。
優しく丁寧に血を吸うし、こんなふうに全体重をかけて私を押し潰したりしない。
けれど、今の叶兎くんは。
牙をさらに深く、えぐるように食い込ませ、獣のように貪りながら私の血を啜っている。
喉の奥からは、ゴクゴクと喉を鳴らす音と、低い唸り声が漏れていた。
いつかの夜、契約する前にも、吸血衝動に負けそうになった叶兎くんに襲われたことがあった。
けど、契約を結んでからはそんな衝動に支配されることは、もう二度となかったはずなのに。
っ……違う。
これは、叶兎くんのせいじゃない……!
多分、あの恐ろしい実験で無理やり体内に流し込まれた、無数の「異物の血」が、叶兎くんの純粋な吸血本能を内側から狂わせてしまっているのだ。
私との契約による絶対的な制御の絆を、上から強引に、力技で凌駕してしまっている。
叶兎くんが、ふは、と浅い息を吐きながらゆっくりと顔を上げた。
血に濡れた彼の唇が、妖艶に歪んでいる。


