「……ダメ! 意識を手放しちゃダメ!」
このまま彼がどこか遠くへ行ってしまう──そんな予感が頭をよぎり、私はなりふり構わず震える両手を伸ばした。
そして、異常なほど熱く火照った頬を、また包み込むようにしてぎゅっと挟み込む。
「叶兎くん、こっちを見て!」
赤と金が入り混じり、混沌とした瞳が私を捉えた。
まだ焦点は合っていない。
それでも、呼びかけに応じるように、ほんの少しだけ瞳に力が戻った。
このまま、このまま落ち着いてくれれば……。
そう心の底から祈り、一瞬だけ安心しかけた、その時だった。
「……っ」
叶兎くんが、私の首筋に顔を埋めた。
心臓が跳ね上がる。
叶兎くんの口元から漏れ出る熱すぎる吐息が、むき出しになった私の肌をなぞるように撫でていき、嫌な汗が背中を伝う。
直後──鋭い、突き刺すような痛みが走った。
「──っ……ぁ、…!」
声にならない悲鳴が喉の奥でひっかかる
牙が、深々と私の首に突き立てられていた。
あまりの衝撃に頭の中が真っ白になる。
それと同時に背中を強い力で押され、血の気が引いていく私の身体は叶兎くんの重い体重を支えきれきれず、もつれ合うようにして、冷たいコンクリートの床へと激しく倒れ込んだ。
ガシャン……!
その衝撃で、ポケットに無理やり押し込んでいた護身用のあの小さな拳銃が、床へと滑り落ちてしまう。
金属音を立てながら、私の指先では届かない部屋の隅へと転がっていってしまった。


