抱きしめている叶兎くんの体温は、驚くほど、異常なまでに高かった。
密着している胸や腕の箇所から、衣服を突き抜けて私の皮膚を焦がすような熱が伝わってくる。
これは絶対に、普通の吸血鬼の体温なんかじゃない。
それでも私の無効化の力がようやく深層にまで浸透してきたのか、叶兎くんはそれ以上暴れようとはしなかった。
私の背中に回された手に、きゅっと力がこもる。
だけど、同時に私の体力も急激に奪われていっていた。
膨大な力を抑え込み続けているせいで、立っているのがやっとなくらいに、足元がふわふわと頼りなくなっていく。
目眩がして、視界が歪みそうになるのを必死に堪えた。
「っ、叶兎くん、大丈夫……?苦しい……?」
私の肩口に顔を埋めたまま、叶兎くんは耐えかねたように震える声でぽつりと吐き出した。
「……あの男……本気で、イカれてる……っ」
首筋に刻まれた注射の跡は、十を超えていた。
あの研究員が嘲笑うように言っていた「No.0」という言葉の、本当の、そして残酷な意味。
最高傑作。
…最も多くの血を投与され、最も長く耐えている被験体。
叶兎くんがゆっくりと顔を上げると、その瞳の金色の割合が、さっきよりも不気味に増えていた。
「──頭の中、ぐちゃぐちゃで、もう、…わけが分からない……」
叶兎くんの声が途切れた。
目から光が消えかけ、再び巨大な暴走の波が押し寄せてくるのが肌でわかる。


