総長は、甘くて危険な吸血鬼 Ⅱ




「──っ」

「…っ叶兎くん…!!」



琥珀が息を呑むのと同時に、私はたまらず叶兎くんの名前を叫んでいた。

ガラスの壁に駆け寄り、両手を押し当てる。


私の声が届いたのか、叶兎くんの指先がぴくりと跳ねるように動いた。



生きてはいる。

でも、反応がない。



叶兎くんはこちらを見ようともしなかった。

ただ浅い呼吸を繰り返し、意識の濁流に溺れているみたいだ。


ガラスの向こう、叶兎くんの周囲の床には、どろりとした赤黒い血痕が飛び散っている。

自身のものか、投与された血のものか判別がつかない。



「おい!反応しろ、赤羽叶兎!」



琥珀がガラスの壁を拳で激しく叩いた。


それでも叶兎くんは動かない。

まるで何かに押さえつけられているように。



琥珀はすぐさま壁にある制御パネルを見つけ、目にも止まらぬ速さでコードを打ち込み始めた。

プシュゥ、と空気が抜ける音がして、厳重なロックが外れていく。



二重、三重にかけられた安全装置が電子音と共に次々と解除され、前面のガラス扉がゆっくりと開いた。

私たちはついに、ガラスの内側へと足を踏み入れる。