「──っ」
「…っ叶兎くん…!!」
琥珀が息を呑むのと同時に、私はたまらず叶兎くんの名前を叫んでいた。
ガラスの壁に駆け寄り、両手を押し当てる。
私の声が届いたのか、叶兎くんの指先がぴくりと跳ねるように動いた。
生きてはいる。
でも、反応がない。
叶兎くんはこちらを見ようともしなかった。
ただ浅い呼吸を繰り返し、意識の濁流に溺れているみたいだ。
ガラスの向こう、叶兎くんの周囲の床には、どろりとした赤黒い血痕が飛び散っている。
自身のものか、投与された血のものか判別がつかない。
「おい!反応しろ、赤羽叶兎!」
琥珀がガラスの壁を拳で激しく叩いた。
それでも叶兎くんは動かない。
まるで何かに押さえつけられているように。
琥珀はすぐさま壁にある制御パネルを見つけ、目にも止まらぬ速さでコードを打ち込み始めた。
プシュゥ、と空気が抜ける音がして、厳重なロックが外れていく。
二重、三重にかけられた安全装置が電子音と共に次々と解除され、前面のガラス扉がゆっくりと開いた。
私たちはついに、ガラスの内側へと足を踏み入れる。


