男が驚愕に目を見開き、声を上げる暇さえ与えなかった。
琥珀の無駄のない、そして鋭い手刀が男の首筋へと正確に叩き込まれる。
ドサリ、と膝から崩れ落ちる男の身体を琥珀は素早く支え、壁際へと静かに寝かせた。
その間、わずか一秒。
もう一人の男がようやく状況を理解し、悲鳴を上げようと大きく口を開けた瞬間には琥珀は振り返りざまに、その男の喉元へ容赦なく冷たい銃口を突きつけていた。
「動くな。質問にだけ答えて」
いつもの人懐っこい、柔和な笑顔を完全に消し去った琥珀の声。
あまりの豹変ぶりに、私の心臓がドクンと跳ねる。
「なっ──」
「赤羽叶兎はどこ?」
琥珀は男の言葉を冷酷に遮り、銃口を喉仏へとぐっと深く押し付けた。
男の顔が恐怖でみるみるうちに引きつり、真っ青になっていく。
この圧倒的な殺気は、自分に向けられているわけではないのに、横で見ている私まで恐怖と緊張で背筋が真っ直ぐに伸びてしまうほどだった。
「し、知らねえ、俺はただの……!」
「嘘はいい。次は引き金を引くよ」
カチャリ、と静かな部屋に引き金を引く音が小さく響く。
琥珀の瞳に宿る、逃げ場のない光。
それは、嘘をつけば本当に命はないと確信させるのに十分すぎた。
男は目に見えてガタガタと 身体を震わせだし、涙目になりながら裏返った声を絞り出した。
「ち、地下二階……!地下二階の奥が、No.0の隔離室だ……っ!本当だ、信じてくれ!」


