「ここから真上。ハシゴがある。…多分、登った先が施設の地下」
囁くような琥珀の声。
言われた通りに頭上を仰ぎ見ると、確かに錆びついた金属製のハシゴが闇の天井へと伸びていた。
──その、瞬間だった。
ドン、ドォォォン……!
遠い地上から、空気を激しく引き裂くような爆発音が轟いた。
排水溝の分厚いコンクリートの壁がわずかに震え、振動で頭上からパラパラと砂埃が落ちてくる。
あまりの衝撃に身をすくませたけど、琥珀は暗闇の中で微かに口の端を不敵に上げた。
「始まったね」
陽動班が動き始めたのだ。
連続する爆発音と、遠くで聞こえる怒号。
これで警備の意識は、間違いなく正面玄関へと集中する。
今が、最大のチャンスだ。
「胡桃、俺が登り切ってから来て。上の安全確認するから」
琥珀の身体が音もなくハシゴを登っていく。
数秒の静寂の後、上から小さな声で「クリア」と合図が届いた。
ホッとして私もハシゴに手をかけ、必死に一段ずつ登る。
登りきった天井の隙間から、琥珀が上からすっと白い手を伸ばしてくれた。
「はい、掴まって」
「ありがとう…」
引き上げられた先は、窓のない閉鎖的な部屋の中だった。
最低限の予備照明だけが、無機質な空間をぼんやりと浮かび上がらせている。


