「胡桃っち、気をつけてね」
「……死ぬなよ」
「絶対無理すんな」
天音くんに続き、九条くんと蓮水さんも心配そうな目で私を見つめる。
「大丈夫だよ。みんなも、どうか無事で」
絶対、全員無事で叶兎くんを救出するんだ。
「行こう。そろそろ時間になる。……胡桃、楪。叶兎を頼んだよ」
時雨くんの合図で、四人の影が森の闇へと消えていった。
「……じゃ、俺らも行こっか」
琥珀が先に歩き出し、私もその背中を追う。
懐中電灯の細く鋭い光が、苔むした地面を照らした。
鼻を突くのは、じっとりとした湿った土と、朽ち果てた腐葉土の匂い。
夜の森の空気は冷たくて、肌にピリピリと刺さるようだった。
数分ほど木々の間を縫うように進んだところで、枯れ葉や泥に半分埋もれるようにして錆びついた頑丈な鉄格子が現れた。
琥珀が周囲を警戒しながら、金属音を立てないように慎重にそれを持ち上げる。
「ここ。降りたら俺が前を行くから、五メートルくらい後ろについてきて」
「…わかった」
暗い穴の底から、這い上がってくるような冷たく湿った空気が頬を撫でる。
梯子を伝って降りた排水溝の中は、懐中電灯の光が吸い込まれるほどの完全な暗黒だった。
遠くの方で、チョロチョロと水が流れる音だけが不気味に、どこまでも反響している。
ぬるりと滑りやすいコンクリートの足場に神経を研ぎ澄ませながら、心臓の鼓動を抑えて一歩一歩、闇の奥へと進んでいく。
五分ほど進んだところで、前を行く琥珀が不意にピタリと足を止めた。
彼の手がすっと上がり、指先だけで「止まれ」の合図を送ってくる。
私は息を詰め、心臓を突き刺すような緊張感の中で琥珀の背中を見つめた。


