総長は、甘くて危険な吸血鬼 Ⅱ






【side胡桃】





──日が傾き始める頃、屋敷の門前に黒い車が滑り込んできた。


運転席から降りてきた琥珀の両腕には、ずっしりと重そうな複数のアタッシュケースが抱えられている。



「おまたせー。装備一式、持ってきたよ」



いつものように軽い調子で微笑む琥珀が、玄関ホールにそれらのケースを並べて蓋を開けていく。

ガシャリと無機質な音を立てて現れた中身に、私は思わず息を呑んだ。


鈍い光を放つ対吸血鬼用の特殊弾、物々しい防護マスク、そして手のひらサイズの小型通信機……どれも、ハンターの正規装備と呼ばれるものばかりだった。



「……これ持ち出して大丈夫なのか」



蓮水さんが眉をひそめ、ケースの中身を覗き込む。



「あはは、大丈夫なわけないじゃん。だから、絶対内緒ね?こんなの吸血鬼に貸し出したなんて本部にバレたら、始末書どころか最悪クビかも」



悪びれもせず、けろっとした顔で笑う琥珀。

そのあまりの緊張感のなさに、九条くんが呆れた視線を向けていた。


…とは言え、リスクを冒してまで力を貸してもらっているのは私たちの方だ。誰も責める権利なんてないし、むしろ感謝しなくてはいけない。


喉まで出かかった言葉を飲み込んでいると、時雨くんが横からすっと手を伸ばした。

装備の数々を手早く確認していくと、私たちのそれぞれの役割に合わせてそれらを分配していく。



「充分。……全員揃ってる?」



メンバーは時雨くん、蓮水さん、九条くん、天音くん、そして……私と琥珀。


琥珀は手慣れた手つきでマガジンに弾を詰めながら、ふと、隣にいた私に視線を向けた。



「胡桃もこれ持っとく?」



差し出されたのは小型の拳銃。