渡が凪を家に招いてから一週間ほど後の金曜日。
授業を終えた渡は、いつも通り宗輔と別れて校門に向かった。
空を見上げると、厚い雲が垂れ込めている。
渡はゆっくりと目に力を入れた。厚い雲はさらに暗さを増し、やがてぽつぽつと雨が落ち始めた。
手にしていた傘を差して、渡は校門をくぐった。
後ろからぱしゃぱしゃと水音が近づいてくる。
「雨水くん」
振り返ると、細蟹が傘も差さずに立っていた。
「今、いい?」
「ダメ。用事があるから」
「彼女?」
「さあ? 用事があるんだ」
「……今日が何の日か、知ってる?」
夕方の薄暗さと雨でかすんで、渡には細蟹の表情がはっきりと見えなかった。
けれど、どんな表情であっても関係はなかった。
「知ってる。だから俺は、君とは帰らないし、何も受け取らない。……必要であれば、蜂須賀を呼んでもいい」
「なんだ、そこまでわかってたんだ。でも別に家がらみじゃないよ」
細蟹が気落ちしたように言った。
渡は何も答えずに彼女を見る。
細蟹の足元や腕、首の周りへと視線を向けた。
「ただ私が雨水くんにバレンタインのチョコを渡して、告白したかっただけ」
「そのために、眷属に俺を監視させたんだ?」
「……ごめん、気持ち悪いよね。他に、やり方を知らないの」
細蟹の足元に、淡い影がゆっくりと広がった。
渡は眉をしかめて、拳を握る。
雨脚が強まった。
「雨水くんにも、彼女さんにも危害を加えるつもりはない。今後は良き隣人としての距離を保つ」
「そうしてもらえると助かる」
「ごめんね、雨水くん」
細蟹は踵を返して去って行った。
渡は握っていた拳を開き、そのままゆっくり歩き出した。
雨脚は次第に弱まっていった。
授業を終えた渡は、いつも通り宗輔と別れて校門に向かった。
空を見上げると、厚い雲が垂れ込めている。
渡はゆっくりと目に力を入れた。厚い雲はさらに暗さを増し、やがてぽつぽつと雨が落ち始めた。
手にしていた傘を差して、渡は校門をくぐった。
後ろからぱしゃぱしゃと水音が近づいてくる。
「雨水くん」
振り返ると、細蟹が傘も差さずに立っていた。
「今、いい?」
「ダメ。用事があるから」
「彼女?」
「さあ? 用事があるんだ」
「……今日が何の日か、知ってる?」
夕方の薄暗さと雨でかすんで、渡には細蟹の表情がはっきりと見えなかった。
けれど、どんな表情であっても関係はなかった。
「知ってる。だから俺は、君とは帰らないし、何も受け取らない。……必要であれば、蜂須賀を呼んでもいい」
「なんだ、そこまでわかってたんだ。でも別に家がらみじゃないよ」
細蟹が気落ちしたように言った。
渡は何も答えずに彼女を見る。
細蟹の足元や腕、首の周りへと視線を向けた。
「ただ私が雨水くんにバレンタインのチョコを渡して、告白したかっただけ」
「そのために、眷属に俺を監視させたんだ?」
「……ごめん、気持ち悪いよね。他に、やり方を知らないの」
細蟹の足元に、淡い影がゆっくりと広がった。
渡は眉をしかめて、拳を握る。
雨脚が強まった。
「雨水くんにも、彼女さんにも危害を加えるつもりはない。今後は良き隣人としての距離を保つ」
「そうしてもらえると助かる」
「ごめんね、雨水くん」
細蟹は踵を返して去って行った。
渡は握っていた拳を開き、そのままゆっくり歩き出した。
雨脚は次第に弱まっていった。



