僕らが紡ぐ、不可思議な話。

 逃げないと喰われる。殺される。そう悟ったから。
 けれど、唯一の出入口は怪異の後ろ。高橋を背負って柵を飛び越えようにも、四階の高さなので完全な死亡コース。というかそもそもの話、高橋を背負って湊はそんな素早く動けない。
 詰んだ。星野湊十二歳、これにて人生ジ・エンドの可能性大アリである。
 まだ他に逃げ道はないかと目を細めて必死に探す。けれど、湊へと怪異の手が伸びてきた。
 その手は、やがて人の形を失い、鋭い大きい針となる。それで急所を刺されたら一発であの世行きだ。
(あぁ……もう終わったかも)
 今までで初めてぐらいの恐怖に駆られる。
 殺すならなるべく一瞬で殺して欲しいと、そんな願いまでもが頭を掠めた。
 抵抗するのは無駄だ。抗ったぶん痛み付けられるかもしれない。
 もう抵抗するのを諦めて、恐怖で溢れている心をなんとか落ち着かせようと深呼吸をする。目を閉じる。ふふ、と満足気に笑った怪異の声が頭に響いた。