僕らが紡ぐ、不可思議な話。

「ん?」
 不思議そうに、だけどちゃんと、伊吹は立ち止まって振り返ってくれる。
 何か察してくれたのか、風真は「じゃ俺、上に早く報告しないといけないから〜」と、先に行ってくれた。
 まだ暗い、誰もいない校舎に、二人だけ。
 まるで、初めて会った時みたいだなと思った。
 湊は、すっと息を吸うと言葉を吐き出す。
「怪異に攫われた先で、幼い伊吹に会ったよ」
「は……」
 伊吹は、何を言われたのか分からない、とでも言うように目を見開く。瞳が、動揺した風に動いた。
「伊吹のおかげで僕は帰ってこれた。……言うの、遅くなっちゃってごめんね」
 さっき渡してくれた、新しいミサンガをそっと触る。
「──小鳥遊伊吹は、誰ひとり見捨てたりなんかしなかった」
 助けに来てくれた時だけじゃない。伊吹のおかげで偽物の世界から脱出できた。伊吹のおかげで諦めないで居られた。他にも、沢山。
 ちょうど日が出たのか、太陽が湊たちの横顔を照らす。
 湊は、まるで花が咲いたみたいに、ふわっと微笑んだ。