僕らが紡ぐ、不可思議な話。

(どれが、伊吹の手……?)
 せっかく伊吹が来てくれたのに、彼の元へ行けない。今度は悔しさで胸がいっぱいになると、くすくす、くすくすと湊を嘲笑う声が聞こえてきた。
 ──助けが来たのは想定外だけど、こんなんじゃ助けに来てもらった意味ないねぇ?
「うるさいっ……」
 捕まえようとしてくる手から逃げるために、結局また走り出すしかない。
 伊吹の声は聞こえているのに、それは何重にも響いて、どこにあるのか分からない。その歯がゆさに、ぎりっと歯を食いしばった。
「どこ!? 伊吹っ──あっ」
 一つの手に捕まえられた。それを合図、というように、一斉に襲いかかられる。
 振りほどいても振りほどいても群がってきて、キリがない。
 怪我したところを爪で引っかかれたりして、痛みに顔を歪めたその時だった。