僕らが紡ぐ、不可思議な話。

「っ!」
 湊には何も聞こえなかったけれど、やはり思った通りだった。
(このまま幼い伊吹がその声のする方向へ行ったら、助かる)
 引き止めず、わざと彼を解放する。幼い伊吹は無我夢中にひとつの“鏡の中”へ飛び込んでいって、湊からは見えなくなった。
 ……これでいい。彼は助かった。
(現実に戻った伊吹は、それがトラウマになっちゃうけど……ね)
 申し訳なさで胸がきゅっとなる。でも、これが正解だ。過去は、変えちゃいけない。
 いつの間にか流れてきていた涙を、ぐっと拭う。
 湊が変えるべきは幼い伊吹が想像した、未来だ。
 ──油断大敵だよっ。
「っ」
 左手を、鏡の中から出てきた手に掴まれ、ずるずると引きずられた。力じゃ対抗できないことを知った湊は、右手のミサンガを指に引っ掛け、直接その手に叩きつける。