僕らが紡ぐ、不可思議な話。

 ゾクッと悪寒が走る。鏡の中から手が伸びてきて、湊は慌ててそれを避けた。
 けれど、今度は周りの鏡から一斉に何メートルにも伸びる手が襲ってくる。湊は、思わず逃げないとと駆け出した。
 走っても走っても、色々な形をした鏡が続き、手が湊を捕まえようと迫ってくる。
 ──逃げないでよ。何で逃げるの? 何もかも忘れて、幸せにしてあげるのに。
「そんなの、幸せなんかじゃない!」
 ──ふーん? でも、逃げるのなんてめんどくさいじゃん。負けるのは分かってるのに。
「ッ」
 制服のブレザーを掴まれて、慌てて脱ぎ捨てる。チッ、と少年が舌打ちした音が聞こえた。
 怖い。捕まったら今度こそ、自分は思い出せなくなってしまう。偽物の世界に閉じ込められてしまう。
 必死に、暗闇の中を走った。終わりなんて見えないのに、ただただ、走って。