僕らが紡ぐ、不可思議な話。

 ──思い出さなきゃ、ずっとあの世界で幸せだったのにね? 何で出たがろうとするの?
 意味わかんない、ってトーンで言われて、カッと頭に血が上った。
「当たり前だよ。あんな強引に忘れさせられて、ずっと偽物の世界で生きていくなんて……全然幸せじゃない」
 ──でもさでもさっ、死んだはずのお兄ちゃんと暮らせるんだよ? 本当に幸せじゃないの?
 きょとんと首を傾げられ、言葉が詰まった。
 確かに、兄と笑いあったあの日々の笑顔は、本当に胸の底から出てきた笑顔だったと思う。ちゃんと、幸せだったのかもしれない。
「……でも、お兄ちゃんは、本来は僕の前に居るべきじゃない人だから。一緒にまた暮らせるのは本当に嬉しかった、嬉しかったけど……運命に抗ってまで、偽物に頼ってまで、幸せにはなりたくない」
 顔を上げて、少年の顔をじっと見つめ返した。
「伊吹を、伊吹たちを、あの生活を──返してよ」
 言い切ると、ザンネンだなと少年は息をついた。
 ──ほんとめんどくさい、人間って。でも、君はもう僕から逃げられないよ。
「っ」
 ──タカナシイブキ、だっけ? そいつが居たから思い出しちゃったのかなあ……なら、今度はそいつが居ない世界へ飛ばしてあげるね。