僕らが紡ぐ、不可思議な話。

 何重にも鏡の割れる音が響いた。思わずぎゅっと目をつぶり、目を開くと──そこには、暗闇が広がっていた。
(え……どこ、ここ……)
 とりあえず、偽物の世界からは脱出できたと言うことか。
 周りを見渡してみると、鏡が数箇所に浮かんでいることに気づいた。しかも、足元に水たまりがあり、そこには暗闇ではなく、昼の住宅街が映っている。
(まさか──ここから、僕が来た世界を探し出せば帰れる、ってこと……?)
 見た感じ、目をこらしてみると五十以上は世界が存在する。歩き進めればもっとあるかもしれないし、そこから自分の居た世界を当てるなんて……無理ゲー過ぎる。
 一つだけ、無惨に割れた鏡があった。きっと、湊が居た偽物の世界だろう。
 ──あーあ、何で思い出しちゃうかなあ。
 急に暗闇に声が大きく響いて、びくっと反応する。探すと、鏡の中に、顔だけ黒く塗りつぶされた、少し不気味な少年の姿があった。
(この子が、この鏡の世界の、主?)
 声が、あの湊が記憶を思い出そうとすると必ず邪魔してきたあの声と似てる。いや、似てるというより、同一人物だろう。