それに、何故か──
(僕もこの人の声、聞き覚えがある)
初めて会った時の、固い声。
湊が諦めかけた時、諦めんなって叱ってくれた声。
気を許した人だけに見せる、少し特別感のある柔らかい声。
兄のような、優しい声。
照れ隠しの時の、わざとらしいぐらいに低い声。
「……伊吹?」
「あ?」
名前を呼ぶと、振り返ってくれた。紫色の瞳が確かに湊を捉えて、息を呑みぐっと拳を握りしめる。
何かを思い出しそうだ。でも、何が?
──違うよ。何を思い出すの? だって、君は記憶喪失でもなんでもない。お兄ちゃんが大好きな、ずっとこの世界で暮らしてきた、普通の中学生でしょ?
(うるさいっ……もうちょっとで、何かを掴みそうなのに……!)
──何が? だって、本当のことを言ってるだけだもん。ねえ、君はこんな人と関わりなんて持ってないよ。大体、思い出せないんでしょ? そもそも会ったことすらないんだよ。
(僕もこの人の声、聞き覚えがある)
初めて会った時の、固い声。
湊が諦めかけた時、諦めんなって叱ってくれた声。
気を許した人だけに見せる、少し特別感のある柔らかい声。
兄のような、優しい声。
照れ隠しの時の、わざとらしいぐらいに低い声。
「……伊吹?」
「あ?」
名前を呼ぶと、振り返ってくれた。紫色の瞳が確かに湊を捉えて、息を呑みぐっと拳を握りしめる。
何かを思い出しそうだ。でも、何が?
──違うよ。何を思い出すの? だって、君は記憶喪失でもなんでもない。お兄ちゃんが大好きな、ずっとこの世界で暮らしてきた、普通の中学生でしょ?
(うるさいっ……もうちょっとで、何かを掴みそうなのに……!)
──何が? だって、本当のことを言ってるだけだもん。ねえ、君はこんな人と関わりなんて持ってないよ。大体、思い出せないんでしょ? そもそも会ったことすらないんだよ。

