僕らが紡ぐ、不可思議な話。

 兄と同じクラスなら三年生だよな。なのに何で、馴れ馴れしく「伊吹」って呼んじゃったんだろ。
 しかも、全然知らない先輩のこと。
「……ごめん。変なこと言った。早く帰ろ」
「はーい。あ、そういえば今日の夜ご飯カレーだって」
「え、ほんと? やった」
 また一つ、小さな違和感、そして“大切な思い出”が塗りつぶされた。
 けれどそれに、湊は気づくはずもなく。兄と一緒に笑いあっているその姿は、確かに幸せそうだった。

 何も無く、スムーズに時が過ぎていく。
 けれどずっと、湊は誰かを探している気がした。
 朝、迎えに来てくれる誰か。
 昼休み、一緒にご飯を食べる誰か。
 放課後、必ず待っていてくれる誰か。
 いつも通りの日常。いつも通りの過ごし方。
 なのに、何か、誰かが足りない。
 一秒ずつ、一日ずつ。時が過ぎていくにつれ、何か、大切なモノが塗りつぶされて行く。その感覚が訪れる度に、湊はとてつもない喪失感に襲われた。

 たまに喪失感に襲われるようになってから、もう一週間が過ぎた。
 今日は兄に用事があり、そして高橋は今日熱で休み、ということで、ひとりで帰ることとする。