僕らが紡ぐ、不可思議な話。

(えっ? なんで……あ)
 右手を撫でると、伊吹から貰ったミサンガがあった。きっと、いや絶対、これのおかげだ。
(よ、良かったっ……)
 これがなければ、今の湊は鏡の中へすっかり引きずり込まれて、跡形もなく消えていただろう。これがあって本当に良かったと思う。
 伊吹に早く報告しないと、と湊はトイレを後にする。こんなことがあったら常人は腰を抜かす事件かもしれないが、……慣れてしまった自分を、改めて怖く感じた。

 三年生の教室へ帰ろうとしていた伊吹をぎりぎりで呼び止めると、湊はさっきの出来事を話した。
 伊吹は難しそうな顔をしてから、「右手出してみ」と口を開く。言う通りに右手を出すと、伊吹は右手につけてあるミサンガを見てもっと顔が険しくなった。
「やっぱり、その出来事で怪異避けの効果が薄くなってる」
「え」
「次引きずられたら抵抗できない。代わりのモノをすぐ作らないと危険だ。……でも、道具は家にあるし」
 伊吹はそこで言葉を止めると、なんてことも無いように、「サボるか」と軽く呟いた。予想の斜め上の言葉に、湊は目を見開く。