僕らが紡ぐ、不可思議な話。

「ごめん、トイレ行ってくるね」
「ん」
「行ってら〜。鏡には気をつけるんだぞ!」
 ガチなトーンで言われて、「はーい」と笑って返した。

 用を足したあと、湊は手を洗っていた。顔を上げると、鏡の中の自分と目が合って、ドキッとする。
 “鏡の中に引きずられる”
(なーんて、怪異の気配はしないし、ただの噂でしょ……)
 思った通り、鏡に映っているのは、冴えない少年──自分の姿だ。そりゃそうだよなと思いながらもほっと息をつく、と。
 鏡の中の自分が、笑った。
「え」
 ぐいっと、鏡の中から手が出てきて引っ張られる。抵抗する間もないまま、本当に引きずり込まれた。
(え、嘘っ……)
 バチンッ
 右手全体が鏡に埋まったと思えば、磁石が跳ね返されるみたいに急に解放される。