僕らが紡ぐ、不可思議な話。

 それは、
 怒りか? ──否。
 悲しみか? ──否。
 恨みか? ──否。
 恐れか? ──否。
 湊の心にある感情は、ただひとつ。
 ……気まずさ、である。
(……いや、えっとっ、ほんとごめんだけど、まじでごめんだけど! それ──)
 ひくっと口が引きつった。
(人違い、です!)
 だって、湊の兄はそもそも交通事故で、しかも湊の目の前で亡くなっている。それに、兄が亡くなったのは兄が小五の頃だったので、年齢も合わない。
 そして、それが兄ではないと言い切れる決定的な事実がひとつ。
(お兄ちゃん……全然僕と似てないんだよね……)
 寧ろ伊吹似だ。湊は母似、兄は父似だったので、湊が茶色の髪に大きい瞳なのに対して、兄は黒髪に少しシュッとしたツリ目だ。なので、……見間違える訳がないのである。
 過去を思い出すと、確かに伊吹は湊の顔を見て動揺していた。兄が死んでいると聞いてから、少し態度も変わった。何回も、湊を護ろうとしてくれた。
 それは全て、過去に犯してしまった罪を少しでも滅ぼすためだったのか。
 そう思うと、違和感が解け、あと一ピースだったパズルがハマるようだった。