僕らが紡ぐ、不可思議な話。

 ……助けを、呼ばないと。
「伊吹っ!」
 ハッとした時には、伊吹は雨上がりの公園に居た。いつの間にか居た兄が、安心した様子で伊吹をぎゅうぎゅう抱きしめる。
 そう。目の前には、ただの公園しか無かった。自分を庇ってくれたあの彼は、どこにも居なかった。
 胸が凍るようだった。
 もしも自分を庇ってなければ。自分がすぐ声のする方へ飛び込まず、彼へ寄り添っていたら?
 あそこの暗さを、ひとりの心細さを、伊吹は知っている。そこで最後を迎えるのは、どれだけ寂しいだろう。
 自分は、あの人を見捨てたのか?
 その事実は、くっきりと頭に伊吹の一生のトラウマとして残った。そして、それと同時に、「自分が誰より強くあろう」「人を傷つける怪異は全て祓おう」と、今の“最強な伊吹”が生まれたこととなる。

 ……そして。その八年後、誰よりも強くなってから、伊吹は。
 自分を助けてくれた男そっくりの、「星野湊」に出逢うのである。

 *

 伊吹は一気に話してくれた。まるで昨日のことを話すように、鮮やかに、繊細に、丁寧に。
 全てを聞き終わった湊は、震えていた。