僕らが紡ぐ、不可思議な話。

 ──その時だった。
「……え? 高橋くん、これ」
 湊は高橋の右手をぐいっと掴み持ち上げる。
 驚いたように目を見開いた高橋は、心当たりがあるのか「あ」と手を引っ込めようとした。けれど、湊がそれを許さない。掴んだまま、制服の袖を強引に下げた。
「何……これ」
 顕になった手首には、高橋の字で「伊吹」と書いたもの、に……まるで否定するようにバツ印を重ねている。
「──っ」
「高橋くん。伊吹を呪っていたのは、君?」
 確かに、そうなら納得できた。伊吹に異性を近づけない呪いは、坂谷が犯人ではないのなら、坂谷にももちろん効く。好きな人を、好きな人の好きな人へ近づかせないためにやったのなら……高橋にも、動機はある。
 高橋は顔を歪め、──はあっと息をついた。
 手は湊に強く掴まれ、しかも見られてしまったのだから、逃げてもしょうがないと判断したのだろう。
「……呪い? 何それ、ただの願掛けだよ。俺が超えたいのはアイツだ。アイツを超えて、えり先輩に好きになってもらう」
「でも、ただの願掛けじゃないよね? 高橋くん、前その手で伊吹の手を握ってた。それ、呪いをかける為に必要だったからじゃないの?」