しゃがんでいるのに、少しだけ高い位置にある彼の顔。夏の光が差し込んで、睫毛の影が頬に落ちる。
……たぶん、今、私の顔は相当赤い。
「あのさ、もしよかったら……勉強教えてくんない?」
「………私が? 晴海に?」
「そう」
「………。」
わ、私が……?
頭の中で、花火みたいに疑問符が弾ける。
「……できれば、ふたりで」
「……!?」
ふたりで。
だめ?と、少しだけ首を傾けて、顔をのぞき込まれる。
思わずロッカーの中へ視線を落とす。
教科書の背表紙が、整然と並んでいる。
落ち着け。落ち着け、私。
晴海のことだから、きっと深い意味なんてない。
たまたま隣の席で、たまたま成績が少しだけ上で、たまたま今、そこに私がいたから。
それだけ。
それだけのはず。
肩が触れそうな距離で感じる体温と、制服越しに伝わる夏の匂いが、どうしてこんなにも胸をざわつかせるんだろう。
窓の外では、強い陽射しに揺られて、青い空がどこまでも澄んでいる。


