「じゃんけんポン……ちぃー! またオレが鬼かよ」
「ユウイチ、お前がじゃんけん弱すぎなんだよ。さあ、みんな隠れるぞ!」
「オイ、ハルチン、お前ちゃんと見つけやすいところに隠れろよ」
「えー、いつもそうしてるつもりだけど?」
「いや、今まで誰もお前を見つけたことないだろ……だいたいゴミ箱の中とか普通隠れるかよ」
「ほら早く、目をかくして数えて!」
「もーいいかい」
「まーだだよ」
「もーいいかい」
「まーだだよ」
「もーいいかい」
「モウイイヨ」
「よーし! 今度こそパーフェクトで見つけてやる。おー、バレバレ、ベンチの裏! タケシ、みっけー!」
「まあ、たしかにココだとすぐばれるよな」
「そこの木の影、みっけたぞ、クミ」
「ちぇっ」
「えーっと、タコのスベリ台に寝そべってるリョウ、よくがんばった!」
「ホッ、このカッコウきついから早く見つけてくれてよかったわ」
「さーって、モンダイのハルチンだ……さすがにまたゴミ箱の中には……いねえ」
「どこに隠れたのかしら?」
「いないなあ」
「しゃーない、みんなで探すか………おーい、ハルチン、降参だ。もう出て来いよ」
「おーい!」
「出ておいでー!」
「返事しろよなー」
「ひょっとして、帰っちまったかな?」
「かもねー、前にもかくれんぼしてたの忘れて、お家に帰っちゃったことあったもの」
「帰るか?」
「かえろー」
「みんな、じゃあな!」
「また明日ね」
〇
「おいハルカ、目を醒ませ」
「あれ、すっかり暗いや……ここはどこ? 私何やってたんだっけ?」
「友達と遊んでたんだろう? さっきタケシがうちの前を通ったときに、ハルチンずるして先帰ったってブツブツ言ってたからな」
「でもタカニイ、ここに隠れてるの、よくわかったね」
「隠れてるっていうか、落ち葉に埋もれて寝てただけだろ」
「ちぇっ、カンペキな姿くらましの術だと思ったのに」
「だいたいおまえの行動パターンはわかってきたからな」
「さすが! でもどうやって?」
「とにかく『ありえない』ってところから探してみる……というかお前、落ち葉の山から顔だけ出てたぞ」
「そうだった、わたし、地面になって空を眺めてたんだった……そしたら眠くなってきて……ダメ、また眠くなってきた」
「おいおい、いい加減起きろ、というかそこから出て来い」
「じゃあタカニイ、ひっぱって」
「しょうがないなあ、ホレ、ヨイショ!」
「ありがとう。でも、また寝そう」
「ほんとにもう……オンブしてやるから帰るぞ」
「肩車がいい!」
「お前、眠いんじゃなかったのか?」
「いいからいいから」
「しょうがないなあ、ホレ、ヨイショ!」
「うぉー、高い高い!」
「うぉー、重い重い!」
「なんだと! レディーに向かって失礼ね」
「いやあハルカ、お前も大きくなったって言いたかっただけだ」
「まあいいや……ハルカんちまで、レッツゴー!」
「……だいたいお前、かくれんぼしてたんじゃないのか?」
「……そうだった、かくれんぼしてたんだ。でも忘れて寝ちゃった」
「お前なあ、そのうちみんなから仲間ハズレにされるぞ」
「もしかして、イジメ?」
「いやあ、お前らはまだガキンちょだから、それはないだろ」
「ホッとひと安心」
「いや、お前は気をつけろよ、しょっちゅう突拍子のないことやるし、言わなくていいことズバズバ言うし」
「それっていけないことなの? っていうか私、何が突拍子なくて、何を言っちゃいけないのかよくわからない」
「……まあ、これから少しずつ、わかるようになればいいよ」
「わかんなくてもいいもん。仲間ハズレにされてもいいもん」
「それじゃさみしいだろう?」
「ぜんぜんさみしくないよ。だって、タカニイがこうやってハルカのこと見つけて、連れて帰ってくれるから」
「……あのなあ、お前といつまでも一緒にいてやれるわけじゃないんだからな」
「えっ! どうして?」
「これから大きくなって、俺は中学に入って高校に入って、大学に入って先生になる。ハルカはハルカで別の学校に行ったり、別の仕事を選ぶだろうし。だいたいお前のオヤジさん、ロンドンの大学で研究するとかで、あっちに行くとか行かないとか、うちのオヤジが話してたぞ?」
「ハルカ、ついていかないもん!」
「そうもいかないんじゃないか?」
「いかないったらいかない!」
「まあ、俺たちが決められることじゃないけどね」
「……ところで、タカニイは、学校の先生になるの?」
「ああ。うちのオヤジからお前は先生になる運命なんだって言われてる」
「ウンメイか……それなら、ハルカはタカニイとケッコンする運命かも!」
「おいおい、イトコどうしって結婚できないだろ……いやできるのかな?」
「ハルカ、タカニイのお嫁さん……オホホ、ウヒヒ」
「……だいたいお前、そういうことすぐ忘れるだろ?」
「そうだっけ? そんなことないよ。キオクリョク、バツグンよ! ……で、なんの話してたんだっけ?」
「ほらみろ!」
「もうすぐ着くぞ。あれ、雨かな? なんか頭の上にポツポツと……」
「雨じゃないモン! ハルカの涙だモン」
「お前、泣いてるのか? なんで……」
「ヒッ……だって……ヒッ……タカニイが、ヒッ……ずっといっしょにいられないなんて、ヒッ……言うからだモン」
「わかったわかった。ハルカの気が済むまで一緒にいてやるよ」
「ほんとう? 約束だよ?」
「うん、約束する」
〇
「……んせい……先生、目を醒ましてください。風邪ひきますよ!」
「あれ、……タカニイ、ここはどこ? 私何やってたんだっけ?」
「……寝ぼけてるんですか? さっきまで校庭の自主清掃で、みんなと落ち葉を集めてたんですが……だいたいこのイベント、先生が言い出しっぺですよ。みんな一旦着替えるって校舎に戻っちゃいましたよ」
「でも、タカニイ……じゃなかった榊原君、ここに隠れてるの、よくわかったわね」
「最近、何となく先生の行動パターンが見えてきました」
「さすが! でもどうやって?」
「とにかく『ありえない』ってところから探してみる……でも、みんながかき集めた落ち葉に顔だけ出して寝てるっていうのは、さすがにまさかねって思いましたけどね」
「ちぇっ、カンペキな姿くらましの術だと思ったのに」
「残念でした……ところで先生、涙が? ……ひょっとして泣いてました?」
「まさか! 落ち葉に埋もれて顔だけ出して泣くなんて、そんなみっともないことできるわけないでしょ⁉」
「……僕は今、それを目の当たりにしてるわけです……ほら、顔に葉っぱがくっついちゃって、ミノムシみたいですよ?」
「誰がミノムシだってえ! だいたい、この都会っ子、ミノムシを見たことあるのかい?」
「もちろんありますよ」
「じゃあ、君もミノムシの刑だ、 エイッ!」
「おわっ、やめてください!」
「ハハハ、落ち葉のベッドでゆっくりお休み」
「ほんとにもう! ……あれ、意外と寒くないですね」
「落ち葉の間に空気の層ができてるからね……ところで君、風邪はすっかり治ったのかな?」
「ええ、お陰様で……というか先生がお見舞いに来なければさらに回復が早かったと思いますが」
「なんか言った?」
「いいえ、本当にありがとうございました」
「どう? こうやって寝っ転がって空を眺めるのは?」
「なんか、不思議な感じです。自分が大地になったような」
「これはまた随分大きく出たね。私なんか、せいぜい地球になった程度よ」
「……スケール感が違いすぎます」
「あの……今、何か空を横ぎったような?」
「ああ、あれはカラスね。連中、時々爆撃してくるから気をつけなさいよ。私も一度ソレを顔面に食らったことがあるし」
「……」
「あの……今、何かが僕の顔をまたいでいったような?」
「ああ、学校の近所で飼っている猫ね、あの子よくグラウンドに侵入してきて、私も何度もまたがれたわ」
「先生はそんなにしょっちゅう、落ち葉に埋もれてるんですか!?」
「そんなわけないでしょう。この季節限定、冬の風物詩よ」
「……」
「ところで先生、こうやっているのもいいんですが、この後まだイベントが残ってませんでしたっけ?」
「ああ、忘れてた! 『落ち葉拾いお疲れ!焼いも祭り』!」
「じゃあいい加減そこから出てきてください。みんなもそろそろ着替え終わって戻ってきますよ」
「じゃあ榊原君、ひっぱって」
「しょうがないなあ、ホレ、ヨイショ!」
「ありがとう」
「ほら、ジャージが落ち葉まみれじゃないですか! なんでうちの生徒用のジャージを着ているかはもう聞きませんけど……さあ、準備に行きますよ」
「榊原君、じゃあ、肩車して」
「ダメです!」
「まあ、イケズねえ」
「もうみんな戻ってきます……ところで、今どきグラウンドで落ち葉焚きなんてして大丈夫なんですか?」
「私はこの学校の防火管理者です。対策も万全です。」
「とはいえ、消防署に届けとかは?」
「申請済みです。ちなみに焼きあがったイモをつけ届けすることになっています。それはアナタの仕事です」
「のどかな街ですね……そうは言っても、ご近所に迷惑では?」
「心配にオヨビマセン。近隣の皆さまに声をかけております。そろそろ集まっていただき、サツマイモを焼いて一緒に召し上がっていただく予定です」
「ずいぶん手回しがいいというか……でもそうすると、すごい量のサツマイモが必要じゃないですか?」
「心配にオヨビマセン。当校直営の甘藷園から収穫済みです……それを玄関まで取りにいくのもアナタの仕事です」
「えっ、ウチにそんな畑があるんですか!?」
「ええ、来るべき飢饉に備えて」
「ユウイチ、お前がじゃんけん弱すぎなんだよ。さあ、みんな隠れるぞ!」
「オイ、ハルチン、お前ちゃんと見つけやすいところに隠れろよ」
「えー、いつもそうしてるつもりだけど?」
「いや、今まで誰もお前を見つけたことないだろ……だいたいゴミ箱の中とか普通隠れるかよ」
「ほら早く、目をかくして数えて!」
「もーいいかい」
「まーだだよ」
「もーいいかい」
「まーだだよ」
「もーいいかい」
「モウイイヨ」
「よーし! 今度こそパーフェクトで見つけてやる。おー、バレバレ、ベンチの裏! タケシ、みっけー!」
「まあ、たしかにココだとすぐばれるよな」
「そこの木の影、みっけたぞ、クミ」
「ちぇっ」
「えーっと、タコのスベリ台に寝そべってるリョウ、よくがんばった!」
「ホッ、このカッコウきついから早く見つけてくれてよかったわ」
「さーって、モンダイのハルチンだ……さすがにまたゴミ箱の中には……いねえ」
「どこに隠れたのかしら?」
「いないなあ」
「しゃーない、みんなで探すか………おーい、ハルチン、降参だ。もう出て来いよ」
「おーい!」
「出ておいでー!」
「返事しろよなー」
「ひょっとして、帰っちまったかな?」
「かもねー、前にもかくれんぼしてたの忘れて、お家に帰っちゃったことあったもの」
「帰るか?」
「かえろー」
「みんな、じゃあな!」
「また明日ね」
〇
「おいハルカ、目を醒ませ」
「あれ、すっかり暗いや……ここはどこ? 私何やってたんだっけ?」
「友達と遊んでたんだろう? さっきタケシがうちの前を通ったときに、ハルチンずるして先帰ったってブツブツ言ってたからな」
「でもタカニイ、ここに隠れてるの、よくわかったね」
「隠れてるっていうか、落ち葉に埋もれて寝てただけだろ」
「ちぇっ、カンペキな姿くらましの術だと思ったのに」
「だいたいおまえの行動パターンはわかってきたからな」
「さすが! でもどうやって?」
「とにかく『ありえない』ってところから探してみる……というかお前、落ち葉の山から顔だけ出てたぞ」
「そうだった、わたし、地面になって空を眺めてたんだった……そしたら眠くなってきて……ダメ、また眠くなってきた」
「おいおい、いい加減起きろ、というかそこから出て来い」
「じゃあタカニイ、ひっぱって」
「しょうがないなあ、ホレ、ヨイショ!」
「ありがとう。でも、また寝そう」
「ほんとにもう……オンブしてやるから帰るぞ」
「肩車がいい!」
「お前、眠いんじゃなかったのか?」
「いいからいいから」
「しょうがないなあ、ホレ、ヨイショ!」
「うぉー、高い高い!」
「うぉー、重い重い!」
「なんだと! レディーに向かって失礼ね」
「いやあハルカ、お前も大きくなったって言いたかっただけだ」
「まあいいや……ハルカんちまで、レッツゴー!」
「……だいたいお前、かくれんぼしてたんじゃないのか?」
「……そうだった、かくれんぼしてたんだ。でも忘れて寝ちゃった」
「お前なあ、そのうちみんなから仲間ハズレにされるぞ」
「もしかして、イジメ?」
「いやあ、お前らはまだガキンちょだから、それはないだろ」
「ホッとひと安心」
「いや、お前は気をつけろよ、しょっちゅう突拍子のないことやるし、言わなくていいことズバズバ言うし」
「それっていけないことなの? っていうか私、何が突拍子なくて、何を言っちゃいけないのかよくわからない」
「……まあ、これから少しずつ、わかるようになればいいよ」
「わかんなくてもいいもん。仲間ハズレにされてもいいもん」
「それじゃさみしいだろう?」
「ぜんぜんさみしくないよ。だって、タカニイがこうやってハルカのこと見つけて、連れて帰ってくれるから」
「……あのなあ、お前といつまでも一緒にいてやれるわけじゃないんだからな」
「えっ! どうして?」
「これから大きくなって、俺は中学に入って高校に入って、大学に入って先生になる。ハルカはハルカで別の学校に行ったり、別の仕事を選ぶだろうし。だいたいお前のオヤジさん、ロンドンの大学で研究するとかで、あっちに行くとか行かないとか、うちのオヤジが話してたぞ?」
「ハルカ、ついていかないもん!」
「そうもいかないんじゃないか?」
「いかないったらいかない!」
「まあ、俺たちが決められることじゃないけどね」
「……ところで、タカニイは、学校の先生になるの?」
「ああ。うちのオヤジからお前は先生になる運命なんだって言われてる」
「ウンメイか……それなら、ハルカはタカニイとケッコンする運命かも!」
「おいおい、イトコどうしって結婚できないだろ……いやできるのかな?」
「ハルカ、タカニイのお嫁さん……オホホ、ウヒヒ」
「……だいたいお前、そういうことすぐ忘れるだろ?」
「そうだっけ? そんなことないよ。キオクリョク、バツグンよ! ……で、なんの話してたんだっけ?」
「ほらみろ!」
「もうすぐ着くぞ。あれ、雨かな? なんか頭の上にポツポツと……」
「雨じゃないモン! ハルカの涙だモン」
「お前、泣いてるのか? なんで……」
「ヒッ……だって……ヒッ……タカニイが、ヒッ……ずっといっしょにいられないなんて、ヒッ……言うからだモン」
「わかったわかった。ハルカの気が済むまで一緒にいてやるよ」
「ほんとう? 約束だよ?」
「うん、約束する」
〇
「……んせい……先生、目を醒ましてください。風邪ひきますよ!」
「あれ、……タカニイ、ここはどこ? 私何やってたんだっけ?」
「……寝ぼけてるんですか? さっきまで校庭の自主清掃で、みんなと落ち葉を集めてたんですが……だいたいこのイベント、先生が言い出しっぺですよ。みんな一旦着替えるって校舎に戻っちゃいましたよ」
「でも、タカニイ……じゃなかった榊原君、ここに隠れてるの、よくわかったわね」
「最近、何となく先生の行動パターンが見えてきました」
「さすが! でもどうやって?」
「とにかく『ありえない』ってところから探してみる……でも、みんながかき集めた落ち葉に顔だけ出して寝てるっていうのは、さすがにまさかねって思いましたけどね」
「ちぇっ、カンペキな姿くらましの術だと思ったのに」
「残念でした……ところで先生、涙が? ……ひょっとして泣いてました?」
「まさか! 落ち葉に埋もれて顔だけ出して泣くなんて、そんなみっともないことできるわけないでしょ⁉」
「……僕は今、それを目の当たりにしてるわけです……ほら、顔に葉っぱがくっついちゃって、ミノムシみたいですよ?」
「誰がミノムシだってえ! だいたい、この都会っ子、ミノムシを見たことあるのかい?」
「もちろんありますよ」
「じゃあ、君もミノムシの刑だ、 エイッ!」
「おわっ、やめてください!」
「ハハハ、落ち葉のベッドでゆっくりお休み」
「ほんとにもう! ……あれ、意外と寒くないですね」
「落ち葉の間に空気の層ができてるからね……ところで君、風邪はすっかり治ったのかな?」
「ええ、お陰様で……というか先生がお見舞いに来なければさらに回復が早かったと思いますが」
「なんか言った?」
「いいえ、本当にありがとうございました」
「どう? こうやって寝っ転がって空を眺めるのは?」
「なんか、不思議な感じです。自分が大地になったような」
「これはまた随分大きく出たね。私なんか、せいぜい地球になった程度よ」
「……スケール感が違いすぎます」
「あの……今、何か空を横ぎったような?」
「ああ、あれはカラスね。連中、時々爆撃してくるから気をつけなさいよ。私も一度ソレを顔面に食らったことがあるし」
「……」
「あの……今、何かが僕の顔をまたいでいったような?」
「ああ、学校の近所で飼っている猫ね、あの子よくグラウンドに侵入してきて、私も何度もまたがれたわ」
「先生はそんなにしょっちゅう、落ち葉に埋もれてるんですか!?」
「そんなわけないでしょう。この季節限定、冬の風物詩よ」
「……」
「ところで先生、こうやっているのもいいんですが、この後まだイベントが残ってませんでしたっけ?」
「ああ、忘れてた! 『落ち葉拾いお疲れ!焼いも祭り』!」
「じゃあいい加減そこから出てきてください。みんなもそろそろ着替え終わって戻ってきますよ」
「じゃあ榊原君、ひっぱって」
「しょうがないなあ、ホレ、ヨイショ!」
「ありがとう」
「ほら、ジャージが落ち葉まみれじゃないですか! なんでうちの生徒用のジャージを着ているかはもう聞きませんけど……さあ、準備に行きますよ」
「榊原君、じゃあ、肩車して」
「ダメです!」
「まあ、イケズねえ」
「もうみんな戻ってきます……ところで、今どきグラウンドで落ち葉焚きなんてして大丈夫なんですか?」
「私はこの学校の防火管理者です。対策も万全です。」
「とはいえ、消防署に届けとかは?」
「申請済みです。ちなみに焼きあがったイモをつけ届けすることになっています。それはアナタの仕事です」
「のどかな街ですね……そうは言っても、ご近所に迷惑では?」
「心配にオヨビマセン。近隣の皆さまに声をかけております。そろそろ集まっていただき、サツマイモを焼いて一緒に召し上がっていただく予定です」
「ずいぶん手回しがいいというか……でもそうすると、すごい量のサツマイモが必要じゃないですか?」
「心配にオヨビマセン。当校直営の甘藷園から収穫済みです……それを玄関まで取りにいくのもアナタの仕事です」
「えっ、ウチにそんな畑があるんですか!?」
「ええ、来るべき飢饉に備えて」



