半年間、一生分の愛をくれたキミに ー余命半年の私の最後の恋ー

「痛っ!」


おでこに痛みを感じて、そっと目を開ける。


「いつまで寝てんだよバーカ」


目を開けると、泉くんの顔が見えた。


顔が…近い。


「あっ、カメムシ」


泉くんは、私が横になっているベンチを指さして言った。


「きゃっ!」


「いって…」


私が勢いよく起き上がったせいで、泉くんとおでこをぶつけてしまった。


「嘘だって。そんな勢いよく起き上がんなよ」


「泉くんがそんな嘘つくから…」


『私が虫嫌いなの知ってるくせに』


今日出会ったはずの彼に対して、なぜかこんなことを思ってしまった。


「教室行かなくていいの?先生が探してるぞ」


そういえば、今日はまだ教室に行ってなかった。


「いいよ、今は教室なんか行きたくない」


教室に行ったら何をされるかわからない。


だから私はここにいる。


「いいのかよ」


「えっ?」


「このままでいいのかって。あのデマ止めようとか思わないわけ?」


止めようって言ったって無理だし…。


「別に勝手に言わせときゃいいじゃん」


もうあのことは思い出したくない。


だから私は適当に受け流した。


それなのに、彼は掘り返してくる。


「よくねぇだろ。アイツラの思う壺だぞ?俺だったら何とかして止めようって思うけどな」


何コイツ。


本当にイライラする。


私がいいって言ってんだからそれでいいのに。


「あなたには関係ないでしょ。私の問題なんだからほっといてよ」


お願いだから、もうこれ以上何も言ってこないで。


「そういうところだぞ。弱いままでいいのかよ。言われっぱなしで悔しくないのかよ」


「もういいから」


今日はもう帰ろう。


私はドアに近づいた。


「おい!」


後ろで泉くんの声が聞こえたが、無視した。