【運命鑑定】で拾った訳あり美少女たち、SSS級に覚醒させたら俺への好感度がカンスト!? ~戦闘力ゼロの追放軍師、最強パーティ(全員嫁候補)と送る甘々ライフ~

「願うんじゃなくて、掴むための名前……」

 ルナは目を閉じてその響きを反芻する。

 四つ葉のクローバーは、『幸運を願う』名前だった。

 でも、アルカナは違う。

 『運命を掴む』名前だ。

 受け身ではなく、能動的。

 そんな意志が、込められている。

 エリナがしみじみと呟いた。

「そうか……。『四つ葉のクローバー』は、もう卒業なのね……」

 少し寂しそうな声。

 四人で過ごした日々への、惜別の念。

 でも、その漆黒の瞳には、新たな決意が宿っていた。

「でも、悪くないわ」

 復讐だけが、生きる意味だと思っていた。

 運命を呪い、過去に囚われ、未来を見ることができなかった。

 でも、今は違う。

 アルカナ。運命のカード。

 自分の手で、運命をめくる。

 過去ではなく、未来を見る。

 それが、新しい自分なのだ。

「いいね!」

 レオンが皆を見回した。

「どう? 『アルカナ』で」

 四人が、それぞれに頷いた。

 力強く。確かに。

「よし!」

 レオンが拳をグッと握りしめた。

「僕らは『アルカナ』だ!」

 その声が、店内に響き渡る。

「輝く未来を、この手で勝ち取ろう!」

「やったぁ!」

 ルナが両手を挙げて歓声を上げる。

「いい響きね」

 エリナが満足そうに頷く。

「決まりっ!」

 シエルがこぶしをふるう。

「ふふっ、良かった……」

 ミーシャが本心から微笑んだ。

 仲間に、認められた。

 その喜びが、ミーシャの胸を温かく満たしていた。

 五人は顔を見合わせ、そして同時に笑い出す。

 明るい、希望に満ちた笑い声。

 それは、『腹ペコグリフォン亭』の喧騒の中で、一際輝いて響いていた。

 『四つ葉のクローバー』という願いは、『アルカナ』という意志へと昇華した。

 幸運を待つのではなく、運命を掴みに行く。

 それが、このパーティの新しい形だった。

 その瞬間。

 レオンの視界に、金色の文字が浮かんだ。

【スキルメッセージ】
【運命のカードが切られた】
【パーティ名「アルカナ」登録完了】
【新たな物語が、今、始まる】

 レオンは静かに目を閉じた。

 胸の奥で、熱いものがこみ上げてくる。

 仲間がいる。希望がある。そして、未来がある。

 『アルカナ』

 運命のカードを手にした、五人の物語。

 それが、今日から始まるのだ。


      ◇


 『腹ペコグリフォン亭』の重い扉を押し開けると、昼下がりの風が頬を撫でた。

 店内の熱気と喧騒を背に、五人は石畳の通りに足を踏み出す。

「さて」

 レオンが大きく伸びをしながら言った。

「次は、各自装備の一新だ!」

 その言葉に、少女たちの反応は様々だった。

 ルナは反射的に金貨の包みをキュッと抱きしめる。

 ナプキンに包まれた四十枚の金貨。

 温もりすら感じる重さ。

 これは初めて手にした、本物の成功の証。

 自分の力で稼いだ、正真正銘のお金。

 今まで、こんな大金を持ったことがなかった。

 魔法学院にいた頃は、学費も生活費も、全て学院が負担してくれていた。

 退学してからは、日銭を稼ぐのがやっとだった。

 残飯で飢えを凌ぎ、野宿で夜を過ごし、ボロボロの服を着続けた。

 そんな日々を過ごしてきたルナにとって、金貨四十枚は、途方もない大金だった。

「嫌よ!」

 ルナは、頬を膨らませて叫んだ。

「せっかく手にした大金なのに!」

 その姿は、宝物を取り上げられそうな子供のようだった。

 両手で包みを抱え、体をくるりと背けて、守りの姿勢を取っている。

 緋色の瞳には、切実な光が宿っていた。

 ――これは、あたしのお金。

 ――やっと手に入れた、あたしのお金。

 ――誰にも、渡さない!!

 エリナも、同じだった。

 黒曜石のような瞳を潤ませながら、小さな拳をぎゅっと握りしめている。

 その手の中には、同じように金貨の包みが握られていた。

「こ、このお金……」

 震える声だった。

「全部使えっていうの……?」

 その声には、今まで味わってきた貧困への恐怖が滲んでいた。

 五年間、一人で生きてきた。

 依頼の報酬は微々たるもので、武器の修理代と食費でほとんど消えた。

 宿に泊まれない夜は、路地裏で眠った。

 冬の寒さに凍えながら、空腹に耐えながら、それでも生き延びてきた。

 だから、お金を手放すのが怖い。

 せっかく手に入れたものを、失うのが怖い。

 また、あの日々に戻るかもしれないと思うと、体が震えてしまう。

 レオンは、優しくため息をついた。

 二人の気持ちは、痛いほど分かる。

 貧困を知っている者にしか分からない、お金への執着。

 それは、生存本能に根ざした、深い恐怖なのだ。