お姫様が出てくる物語の本当に怖いところは、なぜか王子がキスをして目覚めるということが多々あるところだと思うのです。
 もしもあなたが、気絶していたり、眠っている間に知らない男性にキスをされたらどう思いますか?
 王子さまは誰もが認めるイケメンでお金持ちで性格もいい命の恩人だから、嫌悪感のない作品となっていますが、セクハラ問題といわれかねません。キスしたら眠りから覚めるなんて保証なんてあるわけないではないのですから。 
 もし、好きになれない男性にキスをされて目覚めたとしたらお姫様たちはどう思うのでしょうか。
 嫌がっているお姫様がいなかったことが救いだと思うのです。

 王子様は森の中で眠る美しい容姿である白雪姫、眠り姫を見て、どうしても自分の物にしたくなりました。
 こう考えると素敵なお話も怖い話になってしまいませんか?

 みんなが憧れるお姫様の周辺にも怖い話は潜んでいます。
 今回は怖い×おとぎばなしを見ていきましょう。

【騙されすぎな白雪姫】

 白雪姫は継母のくわだてで、毒リンゴを食べて死んでしまうけれど、王子様と一緒に幸せになるというお話です。

 死んだ美女を見つけた王子が小人に熱心に譲ってほしいと願い出ます。もう、死んでいますが、それでも美女を手に入れたかったのでしょうか。王子様は白雪姫を手に入れようとなぜか家来に棺桶を運ばせます。このあと鑑賞するつもりだったのでしょうか。生き返らせる何か作戦があったのでしょうか。

 キスで目覚めるのではなく、棺桶に入っている白雪姫を運んでいた王子様の家来が木につまずいて、そのときに毒リンゴがのどから飛び出て生き返ります。絵本や映画では、キスで生き返ったイメージがあったのですが、木につまづいたおかげだったのですね。少し安心しました。そのおかげで、即結婚となります。そんな簡単に結婚して大丈夫でしょうか? その間のラブストーリーはあまり知られていないので、お互いにどう惹かれあったのかは不明な部分が多いです。
 相手は身分がしっかりした人だったし、お金持ちだったので条件としてはとても良かったと思いますが、そんな簡単に結婚を決めてよかったのでしょうか。

 怖い話としては、義理の母の殺人計画があったようです。(原作では実母という話もあります)

(殺人計画①ひもで絞殺)
 ひもを売る商人に化けて、小人のうちに隠れていた白雪姫にひもを売りつけます。当時はひもを買うという行為はメジャーなことだったのでしょうか。ひもを買うなら今ならホームセンターや百円ショップですね。
 セキュリティーが甘い白雪姫はあっさりドアをあけ、騙されます。そして、ひもで絞殺されます。なんとか小人に助けられて一命をとりとめます。もう少し気を付けたほうがいいと思いますよ。今ならば詐欺にひっかかかるタイプだと思われます。小人は実は運命の王子様なんじゃないでしょうかというくらい助けてくれます。実は小人が白雪姫に恋をしていたとかそういう設定があれば恋愛物語が深まりそうです。

(殺人計画②毒を仕込んだ櫛で刺す)
 まだまだ殺人計画は続きます。小人の家の場所もばれているので、逃げたほうがよさそうですが、また普通に訪問販売で購入してしまいます。変装に気づかないものなのでしょうか。変装の名人だったのかもしれませんが。小人になんとか助けてもらい、一命をとりとめます。小人って実は王子様以上の救世主です。もうボディーガードとして雇いましょう。

(殺人計画③毒リンゴ)
 訪問販売でりんごを買ってしまいます。やっぱり白雪姫は騙されやすいタイプですね。今ならば電話やメールの詐欺に確実にひっかかりますね。農家の人に化けた継母は、おいしそうなりんごを売りつけます。怪しいとか警戒することなく白雪姫は食べてしまいます。もう少し警戒してほしいところです。ここで、本当に死んでしまうのです。素直さや人を疑わないことが命を失うこともあるのです。

 美しい白雪姫への継母の嫉妬から全てははじまります。あまり知られていませんが、一番最後に火であぶった鉄のくつを継母に履かせて、死ぬまでおどらせるという恐怖の仕打ちがあるらしいです。これは誰が提案したのでしょうか。そして、その靴はきっと魔法がかかっているのでしょう。死ぬまでおどらせるという怨念は継母を死へ追いやります。後悔すでに遅し、美しいなんてうわべに惑わされた継母は、心がすさんでしまったのでしょう。そして、白雪姫は美しさで結婚相手をすんなり見つけたのです。美しさは人生を左右することなのかもしれないけれど、心が美しいということが一番だと思うのです。

 継母の美への執着が生半可なものではないですね。鏡が言う世界で1番美しいという白雪姫に対する執着がすごいと思いませんか。継母は何度も殺しに来て、白雪姫は何度もだまされる。それだけ素直なのかもしれないけれど、あまり用心深くないと身を滅ぼすという教訓も含まれているのかもしれません。あまりに素直で人を信じると身を滅ぼすってことなのでしょう。

 でも、あまり物語には描かれない火であぶった鉄のくつを継母に履かせて死ぬまで踊らせる仕打ちをしたのが白雪姫ならば。
 素直に怖い話ですね。


【眠り姫・いばら姫】
本当は怖い眠りの森の美女。眠り姫。いばら姫とも呼ばれます。あまり知られていませんが、王子は鬼の血をひくという話もあるんです。

 100年もの間、眠っていたお姫様のお話ですが、なぜそんなことになったのでしょうか? 実は姫の誕生のお祝いに招待されなかった魔女の嫌がらせからはじまった呪いなのです。15歳になったら紡ぎ車の針が刺さって死ぬという呪いをかけるのです。でも、なぜ招待されなかったのかというと、12枚しか金の皿がなかったので13人目の魔法使いを招待しなかったという理由があります。12人の魔法使いは姫に素晴らしい贈り物をしてくれました。富や美など目に見えない贈り物です。それにしても、そんなにいらついたのでしょうか。器の小さい魔法使いがいたものです。

 もちろん危険となる国中の紡ぎ車を焼き捨てたのですが、15歳になった時に、なぜか老婆が紡ぎ車を持って現れます。見たことがないので、姫は興味を持って近づきます。おそらく13番目の魔女が仕組んだのでしょうが、そのまま針が刺さってしまい、姫は眠ってしまいます。100年たてば、親、友人などの知り合いもいないので、普通は孤独になってしまい不幸になるパターンが多い気がしますが、実はお城の人間全員が眠っているので、孤独になることはないのです。

 眠り姫は、いばら姫とも言われていますね。100年もの間手入れをしていなかった城のまわりにはいばらがたくさん生い茂った状態だったそうです。まさに廃墟ですね。誰も近づかない城に王子は興味を持ちます。美しい姫が眠っているといううわさを聞いたからです。でも、勇気ありますよね。まさに廃墟めぐりが好きなタイプの男性なのかもしれません。誰も近づかないというのも魔法のせいかもしれませんが、普通に考えたら死体がたくさんあったり、建物も草が伸び放題、虫やごみが沢山ありそうな気がします。幽霊が出るかもしれません。実は怖い廃墟の話ですね。王子様は色々な意味で勇気がある男のようです。

 実は、魔法で100年後に王子様が来た時にキスで目覚めるように設定されていたのです。
 100年も眠るということは普通では考えられないことです。老化や汚れなどを考慮しなくてもいいのが魔法の素晴らしいところです。
 王子様、見ず知らずの眠り続ける女性にキスは犯罪ですよ。
 人工呼吸だと割り切れば、眠りから覚めた姫は納得できるかもしれません。

 これは、グリムやペローとは違うバジレという人が書いたバージョンですが、結婚してからも恐怖は続きます。なんと、王子様の母親が人食い鬼という恐ろしい事実があったのです。王子って半分鬼の血をひいているのでしょう。王子様のお母さんは王妃ですが、孫と嫁(眠り姫)を食べたくてしょうがないのです。そこで、王子がいないときにこっそり料理人に調理の指示を出します。しかし、料理人は動物の肉を調理して孫と嫁の肉だと偽ります。

 どんだけこわいお姑さんなのでしょうか。こんな鬼と同居しなければいけないのは幸せとはいえません。孫まで食べようというあたり血も涙もありません。しかし、実は孫と嫁は生きていたということを知ると、怒り狂いへびなどを鍋に入れて大きな料理鍋に入れてしまおうとします。しかし、王子が帰宅してその事態を見てしまいます。自分の息子は食べようとしないのですね。そこで、王妃はへびの入った鍋に王子によって投げ込まれてしまいます。どんな国なのでしょう。結婚してから大変というのは現実をうまく表しているように思います。

 うらまれると大変なことになるのです。相手が悪いと、逆恨みもあるし、人間の感情ほど恐ろしいものはないのです。
 眠り姫は眠っていた期間が長く性格の検証がやりにくいのですが、性格が悪くはありません。
 怖いのは13番目の魔女なのです。

 美しくても困難なことがやってくる。逆恨みのような呪いをかけられても根気強く仲間を待とうってことです。幸せになったと思ってもまた一難がやってくるという現実がめでたしめでたしで終わらないということを表しているのかもしれません。



【シンデレラの真実】

 シンデレラという物語。有名なお話ですが、あらすじをざっくり紹介します。父親が再婚したのですが、父親がなくなってしまい、継母と姉二人がシンデレラを召使い扱いして、結構大変な目に遭います。ここからの成り上がり方からシンデレラストーリーとよばれる王道ラブストーリーがたくさん生まれている原点です。いつの時代もシンデレラのようになりたいと憧れる女性がいるということです。

 お城の舞踏会に国中の女性が招待されるのですが、シンデレラは着ていくドレスもなく途方にくれます。すると、魔法使いのおばあさんがかぼちゃを馬車にしてくれたり、素敵なドレスとガラスのくつを用意してくれます。しかし、この魔法は夜中の12時までです。それを過ぎると元に戻るので、王子様と舞踏会でいい感じになったのですが、急いで帰宅することになります。

 そのときガラスのくつを片方落としてしまいます。でも、なぜか片方のガラスの靴は魔法が解けることがなく、王子様はその靴の持ち主を国中から探すのです。同じ靴のサイズの女性はこの世界たくさんいそうだと思われます。でも、魔法の靴なので、他の人には入らない仕様になっているのです。

 顔を見て探すのではないのは、当時写真がなかったからなのかもしれないですが、同じ足のサイズの女性がわりといそうな気がするので、靴で探すという手掛かりは、結構無謀なかけだと思ったりします。

 シンデレラは美しい容姿であり美しい心を持っていました。それは、この物語の要です。ところが、肝心の容姿を王子様は全く気に留めていなかったのが不思議です。なぜならば、ガラスのくつでシンデレラかどうかを判断したのですから。それは、内面を磨いていればきっと王子様が現れて幸せにしてくれるという乙女の夢なのかもしれません。

 でも、ここは魔法のくつなので、持ち主にしか入らないという素晴らしい靴となっております。一般的にガラスの靴だと思われていますが、グリム童話では1日目は銀の靴、2日目は金の靴となっています。2日連続で舞踏会に行ったのですね。しかも、王子が樹脂を塗って、わざと靴がぬげるようにしたという策略家となっていたりします。なんだか、王子のイメージも意外と積極的なのだと驚きます。
 
 醜い容姿だったりしたら、もしかしたらここまで王子がひとめぼれをしないでしょうし。女性の他力本願の夢物語の象徴です。きっと王子様が現れて幸せにしてくれるというイメージですが、意外とシンデレラは努力家でひたむきです。これは、彼女の努力が報われたお話なのかもしれません。

 日本語に訳すと「灰かぶり」という意味で決して素敵な意味ではないのに、シンデレラっていう名前はどこかキラキラした印象を持ってしまいますね。

 しかし、この後のくつが合う女性を探すくだりが一番の恐怖かもしれません。なぜならば、姉たちの足が大きいならば指を切り落としてしまえばいいというのをシンデレラが率先して継母に提案したのです。シンデレラはかなり姉に対してうらみを抱いていたのですね。普通、そんなことをするはずがありませんが、なぜか継母はそれを姉2人に強要。二人も、王子様と結婚したいという一心で足の一部を切り取ります。やめてーと叫びたくなるシーンが絵本などではカットされています。

 さらに、シンデレラの結婚式に姉たちは白はとに目を攻撃されて失明します。これは、ほとんどの絵本には描かれていません。偶然ならば、天がシンデレラの味方をしたといった描写なのかもしれませんね。

 因果応報で、いじめると自分が想像以上にひどい目にあうという恐ろしい話です。でも、ひどい目にあわせるのはシンデレラの提案だから、うらみを晴らすならば自分で何かしら動かないといけませんね。人のいいなりになる姉や継母たちもどうかと思うけれど、そんなに地位や名誉が欲しいのでしょうか。人間の欲深さは時として一番怖い行動に出てしまうということを示しているのでしょう。

 他力本願となってしまうが、日ごろの行いがきっと報われるといういい例を示した作品。大変な人もきっといつかはいいことがある。夢を与えてくれるお話です。優しい心を忘れずにあなたも今日から努力しましょう。シンデレラが本当に優しいのかどうかは不明です。姉たちの足の指を切り落とすという恐ろしい戦略を考える女性なのですから。もしかしたら、謎の魔法使いのおばあさんと裏で取引していたとか、王子に惚れ薬を飲ませたとか、靴をわざと落として消さないように取引していたなんて、物語では描かれていないけれど、そんな話があるのかもしれません。


【早く人間になりたい人魚姫】

 悲恋のお話、人魚姫。アンデルセンが失恋を経験に描いた物語という裏話もあるそうですが、人魚姫は恋がかなわない悲しい物語です。

 船から落ちた王子を助けた人魚姫。彼女は王子を好きになります。しかし、王子のほうは助けてくれた恩人が人魚だなんて思っていません。気を失っていたので、助けてくれたのは修道院の女性だと勘違いしているのです。
 
 どうしても人間になりたいと人魚姫はねがい、魔女に魔法をかけてもらいます。しかし、元々魚のような下半身を普通の足にする代償はとても大きいものでした。まず、声が出ません。つまり話すことができず、命を助けた話も好きだという気持ちも相手に伝えることができません。字を書くこともできず、伝える手段がありません。しかも、歩くと激痛が走るという呪いのような体になります。体に障害を抱えて生きていかなければいけないという魔法でした。王子としては、話すことができない女性より色々な話をしてくれる女性、面白い女性のほうが魅力的でしょう。この時点で、人魚姫の恋はかなり厳しい条件となります。にもかかわらず、王子に見つけてもらい、なんとか一緒にいることができますが、王子に結婚の話が持ち上がり、なすすべもありません。

 修道院の女性は結婚ができない身なので、かなわない恋かと思いきや――なんと見習いでとなりの国の姫が修道女を一時的にしていたということを知ります。見習いで一時的なので結婚できるのです。王子は喜んで結婚を受け入れます。

 人魚に戻ることができるように仲間たちが人魚姫に最後の助けを持ってきます。それは、姉たちが髪の毛と引き換えに魔女にもらった短剣でした。王子を剣で刺せば人魚姫は元の姿に戻ることができるということでした。人魚の寿命は長く300年くらいですが、人魚が死ぬと泡になってしまいます。人間は寿命は短いですが魂となるので、そういった点も死後の世界が違います。このままだと人魚姫は泡になってこの世から消えてしまいます。

 しかし、王子を刺すことはできず、彼の幸せを優先して泡になってしまいます。せつないですね。でも、ここで自分の幸せのために刺すのでは、こわいはなしができあがってしまいます。バージョンによっては短剣を持って忍び込んだということが見つかり、火あぶりの刑という話も。これは、怖い話です。

 最後に人魚姫は精霊になります。これは消滅しないという彼女への救いですね。精霊として人を幸せにすれば300年後に魂となって天国に行くことができるというひとつの希望が生まれます。幸せをみつけてほほ笑むことができればその分、1年早く天国に行くことができる。しかし、悲しみをみつけて涙を流せば1年遅くなってしまう、そういった話もあります。
 人魚姫は失恋物語ですが、希望を持った終わり方をしていますね。

 報われない恋をしたときに、泡になりたいと作者が思ったことが反映された作品らしいのです。王子は勘違いから始まった恋だったけれど真実の愛になってしまったのです。こちらが愛していても必ず愛してくれるとは限らない、これは仕方のないことですね。

 体に障害を持ち、伝える手段を奪われた人魚姫ですが、それでも優しいこころを失わなかったのです。好きな人に幸せになってほしい、たとえ自分以外の女性とでも彼が幸せであることを望んだのです。人を好きな気持ちは簡単には消えない。相手の幸せを願うことが真の愛ってことでしょう。

 実は一番残酷な物語は人魚姫なのではないかと思うのです。
 いわゆる悪役がいるわけでもなく、王子は気づかないだけ。
 ただただ悲しい最期を迎える人魚姫は一番心が美しいようにも思います。
 声を失ってまで、王子様に近づきたい。
 これは種族が違う者が無理をして恋愛してもうまくいかないよという悲恋の残酷な話なのかもしれません。
 障害を体に持つ女性が、健常な体の女性に愛する人を奪われる悲しさは現実的だとも思います。

 一番怖いのは、恋愛かもしれないと思うのです。
 恋ってドキドキして心がふわふわしてときめくけど。
 恋をしなければ人魚姫は幸せだったのかもしれない。
 恋は盲目というけれど、気づいたら恋に落ちたり、一目惚れなんていうこともあります。
 くれぐれも恋をするときは慎重にお願いします。

 
 世にいうシンデレラストーリーというものは一見華やかで美しいのですが、実は怖い怨念があふれています。
 あなたのまわりにも怖い人がいると思うのです。
 本当に怖いのはおばけでも幽霊でもなく人間だということを忘れないでください。

 あなたが怖いと思った登場人物は誰ですか?
 どの物語が一番怖いと思いましたか?