「カゴをかせ」
　男性は綾香のカゴを奪い自分のカゴと纏めてひとつに。
　空いたカゴを魚屋に渡すと、ここに掴まれと綾香の手を自分の腕に回した。

「歩けるか？」
「あの……？」
「俺のマンション、すぐ隣だから。ガポガポでもその靴よりマシだろ」
　それは靴を貸してくれるってこと？
　
　男性は綾香のためにゆっくり歩いてくれる。
　背は綾香よりも10センチ、いやヒールのズルを除くと20センチくらい高い。
　腕は意外とガッチリしている。

「お会計は私が」
　迷惑かけたお詫びに男性の分も払おうと思ったのに、綾香が財布を取り出す前に爽やかに支払いが終わってしまう。

「買い物袋は？」
「あ、持っていなくて」
　コンビニはいつも袋を買っていたから気にしたことなかった！

「とりあえず一緒に入れていくぞ？」
「お願いします」
　男性はポケットから折り畳まれた買い物袋を取り出し、買ったものを入れていく。
　綾香のカニとお湯を注ぐ豚汁という恥ずかしい組み合わせの買い物は、男性の野菜やマグロと一緒になった。