翌週は2度目に作った料理を。その翌週も綾香と作ったメニューをなぞり続けた。
やはりもう見ていないのかもしれない。
それでも悠斗は毎週金曜日に綾香と作った料理を追いかける。
そして今週が最後の料理。
悠斗は明日が最後だと自分自身に言い聞かせるようにSNSでメッセージを発信した。
◇
「あやちゃ~ん。これ3番テーブル」
「はーい」
会社を辞め、悠斗のマンションのポストに企画書を突っ込んだあと、綾香は近所のカフェで働き始めた。
半年以上前、食事も睡眠もろくに取らないまま企画を練りそのまま悠斗のところに持っていった綾香は、帰り道にこの店の前で倒れてしまった。
空腹だった綾香にサンドイッチを差し出してくれたのが、この店の店主、サブローおじさんだ。
おじさんといっても、もうおじいさんの年だけれど。
「あやちゃん、今若い子に流行りのゲーム知ってるか?」
「私、ゲームは全然やらなくて」
もともとゲームはしていなかったが、彼を思い出さないようにテレビでもネットのニュースでもゲームに関する話題は避けてきた。
彼に信じてほしくて新しい企画書を押し付けたが、今となってはあんなものを渡されても彼は困っただろうという後悔しかない。
それでももう彼に謝る機会も残されていない綾香は、早く忘れることしかできないのに、まだこの街を離れられないままでいる。
正直、自分がこんなに未練がましい女だとは思わなかった。
「今日、常連さんに教えてもらったんだけどさ」
サブローおじさんが見せてくれたゲームは、起動時に「A&Y」と表示されたゲームだった。
「……え?」
気のせいかもしれないが、このゲームは私が悠斗のマンションのポストに突っ込んだ企画ではないだろうか?
類似品?
いや、今までにないゲームを作ったはずだから、類似なんてありえない。
A&Y……?
綾香と悠斗……?
まさかね。
「あ~、そのゲーム俺もやってる」
めっちゃ流行っているよと常連のお兄さんが教えてくれる。
「そういえばさ、テレビのワイドショーでそのゲームを作るきっかけになった事件をやっていてさ」
「事件?」
「そうそう。なんかさ企画をパクられたって」
お兄さんはスマートフォンで検索し、記事を見せてくれた。
やはりもう見ていないのかもしれない。
それでも悠斗は毎週金曜日に綾香と作った料理を追いかける。
そして今週が最後の料理。
悠斗は明日が最後だと自分自身に言い聞かせるようにSNSでメッセージを発信した。
◇
「あやちゃ~ん。これ3番テーブル」
「はーい」
会社を辞め、悠斗のマンションのポストに企画書を突っ込んだあと、綾香は近所のカフェで働き始めた。
半年以上前、食事も睡眠もろくに取らないまま企画を練りそのまま悠斗のところに持っていった綾香は、帰り道にこの店の前で倒れてしまった。
空腹だった綾香にサンドイッチを差し出してくれたのが、この店の店主、サブローおじさんだ。
おじさんといっても、もうおじいさんの年だけれど。
「あやちゃん、今若い子に流行りのゲーム知ってるか?」
「私、ゲームは全然やらなくて」
もともとゲームはしていなかったが、彼を思い出さないようにテレビでもネットのニュースでもゲームに関する話題は避けてきた。
彼に信じてほしくて新しい企画書を押し付けたが、今となってはあんなものを渡されても彼は困っただろうという後悔しかない。
それでももう彼に謝る機会も残されていない綾香は、早く忘れることしかできないのに、まだこの街を離れられないままでいる。
正直、自分がこんなに未練がましい女だとは思わなかった。
「今日、常連さんに教えてもらったんだけどさ」
サブローおじさんが見せてくれたゲームは、起動時に「A&Y」と表示されたゲームだった。
「……え?」
気のせいかもしれないが、このゲームは私が悠斗のマンションのポストに突っ込んだ企画ではないだろうか?
類似品?
いや、今までにないゲームを作ったはずだから、類似なんてありえない。
A&Y……?
綾香と悠斗……?
まさかね。
「あ~、そのゲーム俺もやってる」
めっちゃ流行っているよと常連のお兄さんが教えてくれる。
「そういえばさ、テレビのワイドショーでそのゲームを作るきっかけになった事件をやっていてさ」
「事件?」
「そうそう。なんかさ企画をパクられたって」
お兄さんはスマートフォンで検索し、記事を見せてくれた。



