◇
「舞ちゃん!」
翌日。
オフィスに入るなり、血相を変えた泉が駆け寄ってきた。
「泉さん、お疲れ様です。どうかしましたか?」
「なにを呑気な。舞ちゃん、大丈夫だった? 大変なフライトだったね。よくぞ無事でいてくれた」
「おとといですか? はい。でも私はなにも。無事だったのは相澤キャプテンのおかげです」
「そんな訳ないだろう? 舞ちゃんだってすごく大変だったはずだ」
そう言うと泉は舞の腕を取り、「ちょっと来て」と言ってオフィスを出る。
「あの、泉さん?」
声をかけるが、泉はそのまま廊下を進み、角を曲がって非常口の前までくると、いきなり舞を抱きしめた。
「え、あの……」
「舞ちゃん、どれだけ心配したと思ってる? こんなにか弱い女の子が、あんなに大変な場面に出くわすなんて。どんなに心細くて不安だったか。それを思うと、俺は胸が張り裂けそうだった。舞ちゃん、これからもパイロットを続けるつもり?」
思いも寄らない言葉に、舞はただ驚く。
「もちろんです。どうしてそんなことを?」
「だってきっとトラウマになっていると思うから。空を飛ぶのが怖くなったりするんじゃないか? 無理しないでほしい。俺は君を守りたいんだ。誰よりも君が好きだから。俺に君を守らせてくれないか?」
舞は自分の気持ちがスッと静まるのを感じた。
両手で泉の胸を押して身体を離すと、きっぱりと顔を上げる。
「ご心配には及びません。私はこれでも、覚悟と決意を持ってパイロットになりました。その私の想いは、泉さんには理解出来ないかもしれませんが」
そうだ。
この気持ちを分かってくれるのは、同じパイロットで同じ場面を戦った人だけ。
共に信頼し合い、最後まで諦めずに戦い抜き、一緒にピンチを乗り超えた相手だけ。
舞は一度視線を落としてそう考えると、再び泉を真っ直ぐに見据えた。
「泉さん。私はあなたが思うような性格ではありません。あなたは私のことを、きっと誤解されています。ですから私との交際は、どうかもう忘れてください」
「舞ちゃん、そんなことないよ。俺は君のことを、誰よりも大切だと思っている」
「ですが私は、泉さんのお気持ちには応えられないんです。ごめんなさい」
頭を下げると、舞は「Show Upに遅れるので、これで」と踵を返してオフィスに戻った。
「舞ちゃん!」
翌日。
オフィスに入るなり、血相を変えた泉が駆け寄ってきた。
「泉さん、お疲れ様です。どうかしましたか?」
「なにを呑気な。舞ちゃん、大丈夫だった? 大変なフライトだったね。よくぞ無事でいてくれた」
「おとといですか? はい。でも私はなにも。無事だったのは相澤キャプテンのおかげです」
「そんな訳ないだろう? 舞ちゃんだってすごく大変だったはずだ」
そう言うと泉は舞の腕を取り、「ちょっと来て」と言ってオフィスを出る。
「あの、泉さん?」
声をかけるが、泉はそのまま廊下を進み、角を曲がって非常口の前までくると、いきなり舞を抱きしめた。
「え、あの……」
「舞ちゃん、どれだけ心配したと思ってる? こんなにか弱い女の子が、あんなに大変な場面に出くわすなんて。どんなに心細くて不安だったか。それを思うと、俺は胸が張り裂けそうだった。舞ちゃん、これからもパイロットを続けるつもり?」
思いも寄らない言葉に、舞はただ驚く。
「もちろんです。どうしてそんなことを?」
「だってきっとトラウマになっていると思うから。空を飛ぶのが怖くなったりするんじゃないか? 無理しないでほしい。俺は君を守りたいんだ。誰よりも君が好きだから。俺に君を守らせてくれないか?」
舞は自分の気持ちがスッと静まるのを感じた。
両手で泉の胸を押して身体を離すと、きっぱりと顔を上げる。
「ご心配には及びません。私はこれでも、覚悟と決意を持ってパイロットになりました。その私の想いは、泉さんには理解出来ないかもしれませんが」
そうだ。
この気持ちを分かってくれるのは、同じパイロットで同じ場面を戦った人だけ。
共に信頼し合い、最後まで諦めずに戦い抜き、一緒にピンチを乗り超えた相手だけ。
舞は一度視線を落としてそう考えると、再び泉を真っ直ぐに見据えた。
「泉さん。私はあなたが思うような性格ではありません。あなたは私のことを、きっと誤解されています。ですから私との交際は、どうかもう忘れてください」
「舞ちゃん、そんなことないよ。俺は君のことを、誰よりも大切だと思っている」
「ですが私は、泉さんのお気持ちには応えられないんです。ごめんなさい」
頭を下げると、舞は「Show Upに遅れるので、これで」と踵を返してオフィスに戻った。



