Good day ! 5

「美羽ちゃん!」

その日の乗務を終えて更衣室に向かっていた美羽は、後ろから呼ばれて振り返る。

フライトバッグを手に、泉がタタッと駆け寄って来た。

「泉さん、お疲れ様です。これからフライトですか?」
「いや、今日はエアポートスタンバイなんだ。スタンバイルームに行くところ」
「そうなんですね、お疲れ様です」

二人で同じ方向に、肩を並べて歩き出す。

「俺、この間コーパイの舞ちゃんと一緒に飛んだんだよ」
「そうなんですか?」
「うん。香港便だったんだけど、舞ちゃんから聞いてない?」
「香港ってことは、父が乗務してた便ですか? 舞、エビチリが美味しかったって言ってました」
「えっ、それだけ?」

はい、と答えつつ、美羽は首をひねった。

「なにか他にあったんですか?」
「いや、そういう訳ではないんだけど……」
「あ、ふかひれスープも絶品だったって言ってました」
「そう……」

泉は肩を落として、小さくため息をつく。

「泉さん、どうかしました?」
「いや、うん」

少し躊躇してから、泉は思い切って美羽に尋ねた。

「美羽ちゃんのそのきれいな指輪は、彼氏からもらったんだよね? 舞ちゃんと二人でそういう恋愛の話とか、よくするの?」
「舞とですか? うーん、舞は飛行機のことばかり考えてるので、全然。舞にとっては、飛行機が彼氏なんです」
「そうなんだ……」
「舞がどうかしましたか?」
「いや、なんでもない。よろしく伝えておいて。じゃあね」
「はい、お先に失礼します」

更衣室の前でお辞儀をすると、美羽は少し首をかしげながら泉の背中を見送った。