婚約破棄されましたが、こちらから破棄します!〜第二王子と手を組んで復讐しますわ〜

薄暗い地下の空気が、クラリッサの肌を撫でる。

 彼女は深い息をつき、地図に示された古びた扉の前に立った。



「ここが禁忌の地下区画」



 レオニスと共に進むその場所は、学園の真下に広がる秘密の空間。

 表向きには存在が隠され、関係者以外立ち入り禁止とされている。



 扉の鍵は、王都の闇に繋がる人物から密かに入手した。

 今、クラリッサはその鍵を使って、真実の扉を開けようとしていた。



 中に入ると、冷たい石造りの通路が続く。

 壁に埋め込まれた古代文字と不気味な魔法陣が、薄暗い照明に妖しく浮かび上がる。



「ここは……何の施設だったのかしら」



「調査記録によると、かつて王族の実験施設として使われていたようだ。禁忌魔法や人体実験が行われ、最終的に封印された場所だとか」



「王族の実験施設……?」



 クラリッサは冷たい視線を前に向けた。

 ここに隠された闇が、彼女の知る王族の物語を根底から揺るがすことになるとは、まだ知らずに。



 奥へ進むと、ひとりの少女が鎖につながれていた。

 青白い肌、無表情な瞳。彼女は明らかに人間離れした存在だった。



「……誰?」



 クラリッサが問いかけると、少女はかすかに口を開いた。



「私は……ミリア。ここに閉じ込められている者」



 ミリア……?

 あの、学園のヒロイン……?



「嘘でしょう……どうしてこんな場所に?」



「王族の秘密実験の被験者。感情を制御され、ただ演じるだけの存在。私の涙も、嘘」



 クラリッサは目を細めた。



「それで、あの微笑みも……全て計算されたものだったのね」



「でも……あなたは違う。私はあなたの強さが怖い」



「強さ、ね……」



 クラリッサは微笑み、少女の手をそっと握った。



「なら、ここから一緒に出ましょう」



 その時、遠くから足音が響いた。

 侵入者発見。

 その声が冷たく鳴り響く。



 クラリッサはレオニスに目配せし、彼もまた鋭く頷いた。



「時間がない。急ぎましょう」



 二人はミリアを連れて暗闇の通路を駆け抜ける。