Naked Love〜涙の跡を舌で辿る時〜

「さ!適当に頼んじゃったけど、多分柏木さん好きだと思うよ〜!」

「お口に合えば良いだけど」

にこにこと、二人で楽しそうに私の顔を見てくれる、そのテーブルの上には、ゴロゴロナスのボロネーゼパスタと、プチトマトと一口サイズのカプレーゼサラダと、パセリの香りのする野菜具だくさんなコンソメスープ…。

そして、先輩と私のと先輩の間には、バケツ風の容器に入っている、大盛ポテトフライ。

先輩の前にあるメニューはなんと…二人前はあるだろうアンチョビたっぷりのピザ。
それから、熱々のアクアパッツァ。
ブルスケッタ…と、山盛りだ。

そして、加地さんがいたずらっぽく私に言う。

「コイツ、こんっなに細いのに、大食漢なんだよね」

「怜は余計な事言わなくていいの!じゃあ食べよ食べよ!」

「柏木さん、デザートはパンナコッタとティラミス、どちらが良いかな?」

「あ、えっと…パンナコッタでも良いですか?」


そう先輩に聞くと、既にピザを一枚手に取って咀嚼していた先輩がもぐもぐしたまま、良いよっとジェスチャーしてくれた。

「オッケー、じゃあ食事を楽しんで下さい」


にっこりと棒アニメのパン作りをしているキャラみたいな、優しい笑みを私に投げた後、先輩の頭をくしゃりと撫でて、厨房に戻って行った。

「先輩、愛されてますね」

「っ?!ゴホッゴホッ、か、柏木さん!からかわないの!」

と、先輩は食べていたピザを飲み込む前に、見事に咽返さえりゴクリと勢いよく、水を口にした。


「ん、んんっ!あのねえ、私の事はこの際どうでもいいの」

ちょっとだけ眉間にシワを寄せて、それでも何処かいたずらっぽく、笑いながらポストをフォークで小皿に取り分けながらこんな事を言う。


「それより、柏木さん…あ、希子ちゃんって呼んじゃお。希子ちゃんて、何か恋バナとかないの?全然聞いた事ないなー。なんて思って」

「っ、!?、っ!ゴホッゴホッ!ちょっ!先輩!」

「はいはい…ナプキンどーぞ。咽てるという事は、…何かあるねー?」


その茶化しているようでいて、真剣な眼差しを向ける先輩は、先輩というよりも、最早"頼りになるお姉さん"そのもので…。

つい…言葉を溢してしまった。

そう、たった一言。


「どんなにわすれたくても…忘れさせてくれない、そんな酷い人なんです」


と。


先輩は、それだけを聞頂けで、何もなかったかの様にして、


「希子ちゃん、ピザ冷める前に食べるの手伝って!」


と、笑顔を向けられた。


その優しさに泣きそうになるけれど、私は敢えてその優しさに応える様に、精一杯の笑顔を返して、

「はいっ!」

とだけ言った。