「わかりました、ありがとうございました。」
一礼した彼が、それを手に取ろうとして、指が触れた瞬間、恐らく無意識に軽く机を叩いた。
――トン、トン。
その音が耳に入ると、和那の呼吸が一瞬止まった。
無駄のない、正確なリズム。意識して出せる音じゃない、体に染みついたもの。
(さすが・・・。)
和那がそんな思いに捉われていると
「どうかしましたか?」
不思議そうな声で、湊が尋ねて来る。
「ううん、何でもない。」
和那はすぐに目を逸らした。
その日、それ以降、ふたりの間に業務に関するもの以外の会話は何1つ、交わされることはなかった。
それが、ふたりの再会だった。
それからひと月、またひと月・・・時間は流れて行く。
朝比奈湊は、驚くべきほど、非社交的だった。
「前職は何してたの?」
転職して来た人間が、まず浴びせられる常套質問にも
「ええ、まぁいろいろ・・・。」
とまともな答えを返さなかったし、周りが気を遣って、昼食に誘っても断りはしなかったが、席ではほとんど言葉を発さず、夜の飲み会はほとんど来なかったし、来たとしてもこれまた周りと打ち解けようとする雰囲気は皆無と言ってよかった。
これでは、周囲が彼と距離を置き始めるのはむしろ当然であったが、理由はそれだけではなかった。
彼は仕事が出来なかった。
一礼した彼が、それを手に取ろうとして、指が触れた瞬間、恐らく無意識に軽く机を叩いた。
――トン、トン。
その音が耳に入ると、和那の呼吸が一瞬止まった。
無駄のない、正確なリズム。意識して出せる音じゃない、体に染みついたもの。
(さすが・・・。)
和那がそんな思いに捉われていると
「どうかしましたか?」
不思議そうな声で、湊が尋ねて来る。
「ううん、何でもない。」
和那はすぐに目を逸らした。
その日、それ以降、ふたりの間に業務に関するもの以外の会話は何1つ、交わされることはなかった。
それが、ふたりの再会だった。
それからひと月、またひと月・・・時間は流れて行く。
朝比奈湊は、驚くべきほど、非社交的だった。
「前職は何してたの?」
転職して来た人間が、まず浴びせられる常套質問にも
「ええ、まぁいろいろ・・・。」
とまともな答えを返さなかったし、周りが気を遣って、昼食に誘っても断りはしなかったが、席ではほとんど言葉を発さず、夜の飲み会はほとんど来なかったし、来たとしてもこれまた周りと打ち解けようとする雰囲気は皆無と言ってよかった。
これでは、周囲が彼と距離を置き始めるのはむしろ当然であったが、理由はそれだけではなかった。
彼は仕事が出来なかった。



