元プロバンドマンの部下は、私に気づかない~まさかの再会オフィスラブ~

「午前中にどうしても外せないレコ-ディングがあるからというから、別行動を許したんだが・・・まさかアイツ、面倒になってすっぽかしたんじゃないだろうな?」


「まさか、そんな無責任なア-ティストがいるとは・・・。」


とても思えない、そう言葉を続けようとした和那を遮るように


「奴ならあり得る。」


後ろから声がする。


「朝比奈さん。」


いつの間にか姿を現した湊だった。


「その人を知ってるの?」


「腕は確かだが、よく言えば天才肌、悪く言えば気分屋。この手のトラブルには事欠かない奴です。」


湊の報告に、和那が言葉を失っていると


「湊か?」


驚いたような声が上がった、神崎からだった。


「お久しぶりです。」


湊が頭を下げる。


「お前、こんな所でなにしてるんだ?」


「運営スタッフとして参加してるんです。」


「運営スタッフ?」


眉をひそめるような表情になった神崎に


「あんな奴を使うなんて、先輩らしくないですね。」


厳しい口調で湊が言う。


「腕は確かだったからな・・・。」


バツ悪そうに答えた神崎に


「『STILL BLUE』さんの出番まで、あと40分程です。どうするんですか?」


スタッフの一人が焦ったように言う。


「このタイミングじゃ、代役も探せないでしょうし・・・。」


「最悪、編成削るしか・・・。」


「いや、ご心配には及びませんよ。」


神崎は落ち着き払っている。