元プロバンドマンの部下は、私に気づかない~まさかの再会オフィスラブ~

「そしたら、なんと音楽フェスの案件に関わらされる羽目になって。正直、冗談じゃないと思いましたよ。まさか、逃げ出したのに、音楽の方から追いかけて来られるとは、夢にも思ってなかったですからね。」


「・・・。」


和那は何も言えず、湊の顔を見つめるしかなかった。


「だから最初は、本当に嫌だったんです。会議でフェスの話聞くだけでも嫌だった、耳をふさぎたいくらいだった。」


「あの日、一緒に現場行くのも嫌がってたものね。」


「南澤さんは意地悪だと思いました。」


(確かに、湊をなんとしても、もう1回音楽と向き合わせようとしてたからね・・・。)


その本音を言う訳にはいかず、苦笑いを浮かべるしかなかった和那だったが


「じゃあ、何で?」


気付けば尋ねていた。


「何で、あの日から急に意見を言うようになったの?」


「それは・・・。」


躊躇ったように、湊が黙った。そして、少し考えるような仕草を見せたあと

 
「フェス会場での南澤さん見てたら・・・俺、何やってるんだろうなと自分で思ってしまったんですよ。」


そう言葉を紡いだ。


「朝比奈さん・・・。」


「さっきも言ったけど、南澤さん、あの日ずっと楽しそうだったじゃないですか。」


「そう、かな?」


「そして、誰より本気だった。この人は、本気でこのフェス成功させたいんだなって、思いました。」


「そっか・・・。」


彼の言葉に、和那は思わず、照れ笑いを浮かべる。


「それで・・・。」


「それで?」


「そんな南澤さんの下で仕事をしてる俺が、音楽から逃げて回ってるのは、ちょっと格好悪いなって、そう正直に思いました。」


(湊・・・。)


「自分の音楽に対する感情が急に変わったわけじゃない。さっきも言った通り、今の自分がまだ音楽が好きなのかどうかもわからないし、思い出したくないことだってある。でも・・・。」


ここで、湊は真っ直ぐ和那を見た。