元プロバンドマンの部下は、私に気づかない~まさかの再会オフィスラブ~

(分かる・・・。)


彼らの懸念を、湊は一瞬にして理解した。その配置、向き、導線。実際の現場だとどうなるか。湊にはイメ-ジ出来た。だけど・・・。


和那を改めて見る。真剣なその横顔には、少しでも良いフェスにしたいと願う彼女の思いが看て取れた。

 
(南澤さんが、ここまで本気なのに。自分は何もしない・・・それでいいのか、朝比奈湊・・・。)


次の瞬間


「まだ動かせるんですか?ステ-ジ。」


湊はそう口に出していた。


「朝比奈さん。」


驚いたように彼を見た和那の横で


「もちろん、大掛かりにはもう無理ですが、若干の調整なら可能です。」


責任者が答えた。


「だとしたら・・・ステ-ジの向きは絶対にこのままじゃない方がいいです。」


その場にいた全員の視線が集まるのを、湊は感じた。でも・・・もう構わなかった。


「このままなら多分、本番で人の流れが詰まります。」


ずっと閉じていた扉を、ほんの少しだけ開けるように、湊は続けた。彼が、自分の持っているものを使おうと決めた瞬間だった。そして


(やっとその気になってくれた・・・。)


そんな湊の姿を見て、和那は内心でガッツポ-ズを決めていた。