元プロバンドマンの部下は、私に気づかない~まさかの再会オフィスラブ~

夜、残業を終えたオフィス。


人の気配が減ったオフィスで、和那は資料整理をしていると、遠くから、小さな鼻歌が聞こえて来た。


(えっ・・・?)


和那の手が止まり、慌てて、声が聞こえて来た方を見る。給湯室、湊がコーヒーを淹れながら、恐らく無意識に口ずさんでいる姿が目に入る。
 

(湊・・・。)


和那の胸が、大きく跳ねる。思わず、そんな彼を凝視していると、湊はハッとしたように口を閉じた。そして、和那に気づくと


「あっ・・・。」


少し気まずそうな表情を浮かべ


「すみません。」


と頭を下げた。


「だから、何で謝るの?」


「いや、仕事中に鼻歌なんて不謹慎だったなと・・・。」


「別に定時は過ぎたし、人もほとんど残ってないんだから、そんなことにイチイチ文句つけるわけないでしょ。」


「すいません・・・。」


「だから。」


「どうも、癖みたいです。」


「だとしたら治したほうがいいと思うよ、その癖は。」


「努力します。」


生真面目にそんな返事をした湊に、一瞬笑みを浮かべた和那は


「そう言えば。」


「はい。」


「いい歌だったね。」


「えっ?」


「さっき、君が口ずさんでいた曲。」


そう言って、湊の顔を見た。